降る星、らんらん

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 簡単にいうと、私たちの国では神に捧げる神子として育てられた者の一部、特に直感がよさそうな少女の目玉と脳をくり抜き、観測衛星に載せて宇宙に飛ばした。  その観測衛星には高精細のレンズが備えられていて、それは私たちの目と直結されて星の動きを詠む。私たちは空に浮かび、今も地球から少しずつ離れながら、宇宙の星々をその目で直接観測している。私たちの脳に何か特異な反応が発生すれば、自動的にその情報が本国に伝わる。だから私たちはその星が視界に入りそうになれば、あえて目を閉じて眠りについた。人の脳を使用する以上睡眠は必要で、何故かランダムに訪れるその時間は容認、というか諦められている。  そもそも本国は勘違いしているんだ。その星は確かに見れば目に入るだろう。けれどもそうでなくても近づけばその存在が自然とわかるのものなのだ。人である限り。  それが何故だかはよくわからない。けれどもそれが人に滅びをもたらすものだから、なのかもしれない。  けれどもそもそもこの状態の私たちは人といえるんだろうか。  だから私たちがその星を見つけられなくても無理はないんだ。きっと。  本国の誤算はその高精細な視野で、私たちが地球を見ることができたことだろう。  本国にいる間はそれが当然だと思っていた価値観は、世界の中で当然ではないことを知ってしまった。けれどももうその時点では、どうしようもなかった。私たちは空高くに打ち上げられ、一方的に地球から遠ざかるばかり。あのカフェの青年と話すことも触れ合うことも、既に決してできなくなっていたんだから。  私たちの嘆きや悲しみというものは、どこにも届かなかった。発信されるのはただ、目と脳が受け取った情報だけだったから。悲しみを溜め込んで、諦めた時、結局の所様々な価値観というものは私たちには縁がなかったのだなと感じた。
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