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アルファケンタウリの方向から長い距離を渡って訪れた隕石が、大気圏を突破しながら落ちていく。そしてそれは地上に到達する前に、身悶えするように一瞬だけ明るく光って、尾を引きながら地球に柔らかく衝突する。
それに合わせて小さく歌うんだ。これがあの小さな石の最後の瞬間だから。
でもその小さな石の消滅を悲しむ必要はない。
なぜならもうすぐ全てが終わってしまう。
そんな光景が頭に浮かんだ。
いえ、全てが終わってしまっても、私たちは取り残されて、ここでぼんやり見ているのかもしれない。それはきっとほんの、もう少しだけ先の未来。
最近、人生というのはあの隕石のようなものじゃないかなと思う。どこからともなく現れて、一瞬光って消えていく。そしてその多くは大気圏を突入する前に消滅し、地上まで降り立って存在を残すのはごくわずか。
けれどもそんな人の運命からも、私たちはすでに外れていた。
私たちはここで星を詠んで暮らしている。見渡す空には満点の星が広がっている。その運行を眺めて、少し先の未来を詠む。とはいえ厳密には私たち自身がそれを読んでいるわけではない。私たちに繋がった機械が勝手にその有無を判断するだけで。
私たちにとってちょうど地球の方を向いている時間はプライベートにあたる。だから最近私は、その時間は地上を眺めることに費やしている。
最近のお気に入りは異国の島国にある小さな町のカフェを営む青年で、海岸際に設えられたオープンテラスにちらちらと出る度に、笑顔で接客している姿が見えた。雨が降ると困ったなぁというような表情で空を眺めている。けれども夜に晴れると、そのテラスに天体望遠鏡を持ち出して星を眺めている。
その時の表情は、普段の接客の時のものとは少し違って、たいていはとても真剣で、それから楽しそうだった。それからたまにはその日に何かがあったのか、悲しそうな表情を浮かべることもあった。その悲喜こもごもの姿を眺めていると、人間の人生やらその縮図とというものがありありと感じられて、なんだかとても懐かしい気がした。
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