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ファーストチョイス
「たぁくんは七面鳥さんと兎さんどっちがいい?それともロブスター?ママはロブスターよりシェルクラブが好きよ。」
ロココに白い12席のダイニングテーブルの一角でピンクのリボンとフリルでデコルテされたタブレットを片手に、ユキさんは暖炉の前で寛ぐ狩猟犬達に埋まるたぁくんに聞く。タブレットとお揃いのチャームのついたペン先はその間も休むことなく株価をチェックし、小さな耳元で揺れるピンクパールのピアス型通信端末に囁き声で売買を指示する。たぁくんには聞こえない小さなやりとりだ。
ご主人のコナーより大きく賢い犬達に揺り起こされまどろんだままたぁくんは、こてんと頭を倒してまたうとうとする。ママは、どのこがすき?って聞いてた?若い猟犬のスタイリッシュな黒巻き毛に埋めていた顔をあげ、傍らで優雅に侍る老犬二匹にも確かめれば、湿った鼻先がそうだよってちょんとつついた。
「とりさん。とりさんがすき。」
「はぁい。グランパにお願いしておくね。パパ、薪をもう少し足して鹿のシチューを温めちゃいましょう。雪になりそうよ。」
「うん?ああ、うん。レディの仰せのままに。」
赤味の濃い金髪をかきあげゆらゆらするロッキングチェアーからのそりとコナーは立ち、暖炉脇に組まれた薪を放りこむ。あくび交じりの、パパは兎が美味しいとおもうけどなぁ、って声は暖炉で勢いよく弾けたの薪の音でたぁくんには届かなかった。
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