ウィッシングターキーアマジカル

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ウィッシングターキーアマジカル

「だからなぜだ?日本人はホリデイに仕事を持ち込む趣味でもあるのか?全く以ていかれてる。歓迎するよ。ようこそ我が城へ。」 「なぁ公共機関がストライキする悪政の国民に一般市民への迷惑を恥じ入る美徳は無いのか?3日も足止めで何がつらいって食いもんがマズイんだよ。」 「意思表示ひとつ右倣えの民には改革の旗を翻す勇ましい国民の機微が理解できないだろうね。ティータイムにしよう。夕飯前にスパイスティとチキンパイはどうだい?」 流れ作業でドアマン兼ベルボーイにトランクを奪われ、足元に纏わり付くパンダカラーのふわもこシープドッグにサロンへ誘導されたのは日本からやってきた営業マンの隼人だ。わふん、と歓迎したフリー(シープドッグ)はレースカーテンはためく窓辺のお気に入りのマットに優雅に伏せた。マットは鹿革ではない。ふちにあしらわれたレースの残るピンク色のユキさんの膝掛けだったものだ。 「()に行かないのか?シーズンの猟犬は森の小屋で過ごすんだろ?」 たぁくんは苦笑いし、聞いてくれるな、と続ける。 「育て方を間違えてしまってね。フリーは自分が人間(レディ)だと信じてるんだ。」 「おっふ、まじか。、、お前おんなだったか、、」 「わっふ。」 「いや、オスだ。」 「だよな!?」 タラも大変だな、と心にも無い世辞を口にした隼人は風の通る窓から青空を眺めた。 「営業(仕事)する気にならねえ陽気だ。」 「だろう?田舎の夏は実に素晴らしいよ。ゆっくりしていくかい。」 魅惑的な誘いに逡巡する隼人の後ろから、開け放したままのドアにコンコン、コンコンとノックが響いた。ボーイが軽食のワゴンを押して入室する。立ったままの隼人に着席を促し、カッティングしたチキンパイと白ふちのガラスのティカップを3人分セットすると、お仕着せ(ボーイ)の上着を椅子の背にかけて自身も着席した。ティポットと茶葉の入った缶を手にしたのはたぁくんだ。ティポットのやけに赤い紅茶(ルビーレッド)から生姜とカルダモンの香りが風に流れる。ストレーナーで濾されガラスカップの中で揺れるルビーレッドに艶やかな金色のはちみつを垂らし、陶器の白いスプーンでくるりとかき混ぜた。鮮やかだねえ、と目を細め貝殻模様の白いソーサのふちを撫でた青年は間抜け面を晒す隼人にカップ越しに問う。 「プッサン。ボクが誰かわかるかい?」 お仕着せのカッターシャツのボタンを1つ外し袖を捲る黒髪の青年は黒い瞳を細め微笑んだ。その胸元には虹色に燦めくルーペがぶら下がる。 「、、おっふ、まじか、、、わかる、に決まってんだろうよ、、ヒロヒコ。」 「うん。ひょっとして七面鳥の面影があるかい?よくわかったね。」 「っ、俺ここにおまえらしか仲間いねーからな!?正解しかありえねえだろ!」 「「全くだ。」」 悪戯(サプライズ)が成功した、と快活に2人は笑う。ふざけんなよ、なんで教えてくれなかったんだ!?いつからだよ!?と咎める隼人に、フリーも窓辺から、わふわふ、と援護する。空は青く風は爽やかでお昼寝日和は仲良く過ごさなくちゃもったいないよ。「わっふん。」 「「「全くだ。」」」
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