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ボーイミーツターキー
たぁくんの祖父のタフティの豪奢な赤金のクルクル巻き毛はあごひげに繫がっている。だからいつも見えない口元。だけど間違いなく笑ってる。わかりやすいくらい目もとを綻ばせて真っ赤なジープから下りてきたタフティの背中を二階のピアノ室の窓から見つけて、たぁくんはぴょんと黒皮の丸椅子から飛び降りる。ピアノの鍵盤にフェルトを掛けるのは忘れない。乱雑に斜めになったけどいちおう覆えている。
「オリーおいで!クレバー、ボクを乗せて!ワイズはドアしめて!グランパが来たよ!」
勢いよく廊下に飛び出したたぁくんは賢い犬たちに指令をキビキビ出した。オールドイングリッシュシープドッグのクレバーは緩慢な動作で、階段で足踏みするたぁくんの前に回りこむと伏せて、ピコンと左の垂れ耳をあげスタンバイのサインを出す。たぁくんはクレバーの背中によいしょと乗っかった。お腹をしっかりと頼もしい背中にくっつけて両手でもしゃもしゃの首に抱きついて、いいよ!と声をかける。お留守番と子守が仕事になっているクレバーはたぁくんを乗せたまま楽々と立ち上がった。迷わない足取りで階段を降り玄関へと向かう。ぴゅうとエントランスから雪が吹き込む。開いたばかりのドア目がけてごま塩模様のイングリッシュセターのワイズが弾丸みたいに階段をひとっ飛びにする。
「ストップだワイズ。ふむ。凛々しくなったじゃないか。おおっクレバーは我が家の王子様を連れてきてくれたか。」
のしのしと大きな体を揺らし雪を払うタフティはずんずん前に進んでくる。それに対して、クレバーは優雅な足取りをピタリと止めた。両手を広げ迎え入れようとするタフティにクレバーは右耳をちょっと上げて警戒し、ちらりとたぁくんを伺う。たぁくんはクレバーの背中にくっついたまま胡桃色の眼を真ん丸にした。たぁくんの騎士のようにぴったり横に付いたオリー、レモンホワイトのイングリッシュスプリンガースパニエルは、射貫く鋭い目つきでタフティの広げた手元を凝視する。広げた手元、正確には右手にぐったりと力なくぶら下がる大きな大きな七面鳥をだ。
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