ハローマイフレンド

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お茶を淹れよう、と立ち上がったたぁくんは七面鳥の隣に隼人を座らせた。丸テーブルの天板の縁装飾(ルネット)に隼人は半月模様の個数を計算するべきかと埒なく指を這わせる。なるべく七面鳥は見ない。計算は捗らない。素数にするか、と深く息を吸う間も七面鳥は話を続けていた。 「タマゴの中でも考えていたんだ。」 「タマゴ。」 全く気持ちを落ち着けることは出来ないまま隼人は相鎚をオウム返しする。 「なんども農場から逃げ出したんだ。ソレがよくなかった。いやソレでよかったのか?ぶん殴られて気絶して目が覚めたら坊ちゃんの番犬が目の前だ。つまりは調理場の一歩手前。ああ、良い香りだね。」 銀製のティポットから金彩のティカップへ伽羅色が注がれる。モチーフのハアザミはカップの中ほどまで金彩を伸ばし底にはスモモやチェリーが描かれ琥珀色(ストレートティ)であれば秋の気配を愉しませただろう。 「ロイヤルミルクティーにしたよ。茶葉はアールグレイで砂糖もたっぷりとね。」 「タラ、それならカップ選びを間違えたね。」 物憂げに七面鳥は金彩のソーサの淵を羽毛で撫でた。そうかい?とたぁくんは取り合わない。ミルクティーに相応しいカップはこのパーラーには無いし、そもそもミルクティーを淹れはしない。 「坊ちゃん?」 「そう。幼いボクだ。彼はボクよりよほど大きかったよ。逆さまだったけどね。」 たぁくんはカップの淵を親指と中指で持ち口に運ぶと、うん、と満足気に微笑んだ。足首に縄を括られて吊されてたんだよ、と七面鳥は先ほどから表情の動かない隼人に注釈をいれた後で、ソーサごと持ち上げ慣れた動作で口元でコクリと飲み目を細める。 「食べたら呪う、って言ったんだ。年端のいかない坊ちゃんへの脅しとしては上出来だろう?」 「年端がいかなすぎて、ノロイ(言葉)がわからなかったよ。でもまあなんとなくは伝わった。」彼すごい形相でさ、真っ青でぶるぶる震えてた。 「そして母が怖がってしまった。彼女は日本育ちだからね。はっきりと聞いてしまった。」 「それで、生き延びて今に至る。早く人間に(なり)たいと願って20年だ。成人を迎えてしまったよ。ははっ。」 乾いた笑いがカチカチと鳴る嘴と妙な具合の和音を奏で、隼人はふと気が抜けた。抜けてしまった。 「人間に成りたいって、、ベムかよ、、」 「「ベム?」」 「いや、アニメだよ昔の、妖怪がはやく人間になりたーい、って、いや、よくしらんけど。え、なに、なんだよ!?」 視界に入り込む白い質量は、赤から青へと変化するトサカをブルブル震わせ手羽まで羽毛を膨らませ倍に大きくなった七面鳥だ。鋭すぎる眼光とカタカタ鳴る嘴は威嚇か!?と友人に助けを仰ぐと七面鳥に匹敵する驚愕の表情で隼人を凝視していた。条件反射で身を引けば、ずいっと左右から身を乗り出され距離を詰められた。 「「それで?!どうやって人間になった?!」」 「えっ知らんよっ!?いやっ!?俺らが生まれる前のアニメだし!?」
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