15人が本棚に入れています
本棚に追加
今は色のない世界を、新幹線は進む。
母から連絡があった翌日、達樹は職場に休みの連絡も入れずに朝一の新幹線に飛び乗って、実家の最寄り駅に向かっていた。
窓の外には日本一の山、富士がそびえたっている。
一人暮らしに希望を抱いて上京した六年前。
あの日新幹線の窓から見た時はキラキラと輝いて見えたあの山も、のっぺりとしたただの白い塊にしか見えない。
真っ青に晴れ渡っているはずの空も、闇の底のように黒く塗り潰されている。
達樹の目に映る全てがモノクロの世界になって、早一週間が経とうとしていた。
最初のコメントを投稿しよう!