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「ふぅー、ようやくくたばったぜ」
「後始末をよろしくね」
「ああ」
馬鹿どもが……。
口に混じる苦い液を感じながら、私は倒れたままじっと動かずにいた。
死ねない。
我が同胞を、
愛する妻を、
子供達を奪った貴様らに復讐するまでは!
男がもう一度こちらを見る。
私は弾みをつけ、油断しきっていた女の方に飛びかかった。
「いやぁぁぁっ」
「このやろぉっ」
男が腕を振り上げる。
バチ――ンッ
ハエタタキが部屋高く舞い上がった。
「床が汚れるじゃないっ! こいつら何度も復活するから気をつけてってあれほど言ったじゃん! あ、あたし、あたしすっごく怖かったんだからぁぁ」
「ご、ごめんよ? 今度もっと強~い殺虫剤買って来ような? な?」
頬をさすりながら、男は泣いている女を抱き寄せ心で唾を吐く。
――だったらてめぇがやれやウゼぇ。
二人の関係はじきに終わりを告げるだろう。
もう少しだな‥‥‥。
音もたてずにG氏は嗤い、
冷蔵庫の裏に消えた。
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