君を乗せて

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「懐かしいなあ」 お前が言う。 「お前が小学校の入学式で知らない上級生にびびってわんわん泣いてたの、いまだに覚えてるぜ」 「いつの話だよ」 「でも上級生になったらなったで、今度は『顔が怖い』って新入生泣かしたり」 「うるせえな。顔は生まれつきこうなんだよ」 「中学で部活に入るとき、『何であいつが園芸部なんだよ』ってみんなが驚いてたの知ってるか?」 「だから顔のことはほっとけよ。悪かったな、強面で」 子犬のような言葉のじゃれ合いが続く。 何となく、会話を続けなければという焦りにも似た何かに突き動かされて、俺たちはひたすらに言葉を発していた。 「お前は優男の顔だからな。さぞおモテになったことだろうよ」 「さあ、どうかな」 お前は笑って俺の言葉を流した。 それきり、沈黙が降りる。 言葉が途切れたら、行ってしまう。 時間が突然走り出したように、さっさと行ってしまう。 「俺さ」 俺はとっさに口を開いていた。 お前はちらりと俺を見た。 「会いに行く。金貯めて、お前の家まで行ってやるから」 「じゃあ、その時には嫁さんと二人で出迎えさせてもらうかな」 「お、俺だってその時には彼女くらい……!」 「楽しみにしてる」 お前はふふ、と笑ってまた前を向いた。
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