いい匂いがするジャンバー

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 ふと、右を見ると扉がある。これもまた、開きっぱなしだ。 鈴香が八宵に気を使ったのか、はたまた、掃除当番が忘れていったのか 想像は膨らむばかりだが、友達を待たせていることもあり、 廊下を出て扉を閉め、また、歩こうとしていた。  が、やはり、気になってしまった。共有のジャンバーかけに 1着だけ、ジャンバーがかかっている。  全体は黒だが、所々に白が入っており、フードに紐が着いている。 八宵は、ただ、それを見つめるだけではなかった。 (女子のかな、男子のかな、ちょ、少しだけ匂いを……)  ジャンバーを両手で抱き、顔に近づけスンスンと2回鼻呼吸を繰り返した。 (わぁ、いい匂いだぁ。)  と、顔を緩め突っ立っていると、足音が聞こえる。 八宵は、顔をブンブンと振り自我を取り戻したかと思うと、 すぐに教室に隠れた。
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