買い出しじゃんけん

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「あ、やっべ。シャンプー切らしてたわ」  サークルのお泊まり会が始まる数時間前のことである。俺は自宅アパートの収納を見ていた。 「まじすか」 「あら大変」  タオルの準備を手伝う後輩の桜井と同級生の羽菜(はな)はこちらを向いた。 「じゃあ買い出しじゃんけんすね」 「買い出しするほど、足りないものあったか?」 「果物が全然足りてなかったわ」 「何に使うんだよ」 「ミックスジュース作ろうって言ったじゃないすか。ミキサーで混ぜるだけのやつ」 「ああ、あれか。分かった、じゃあ、じゃんけんだな――よし、行くぞ」 「「「最初はグー。じゃん、けん、ぽん!」」」  俺はグー。羽菜はパー。桜井はチョキ。 「「「あいこで、しょっ!」」」  俺はパー、羽菜と桜井がチョキだった。 「あら、時田くんになるのかしら」  羽菜はうふっと笑った――ああ、可愛い。 「――先輩」  桜井が耳打ちしてきた。「なんだ、桜井」 「いいんすか、俺たちを二人きりにして」 「どういう意味だ?」 「男女が一つ屋根の下ってことは、やることは一つじゃないっすか……?」  桜井はいやらしく笑っていた、俺をあざ笑うかのように。 「二人、さっきから何をお話ししているのかしら。買い出し、時田くんにお願いしていい?」 「いや、三回勝負にしようぜ」 「どうして?」 「いいから。三回勝負な!」  桜井はシニカルに笑った。 「いくぞ!」 「「「最初はグー! じゃん、けん、ぽん!」」」 完
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