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「すぐ片付けるからソファーにでも座ってて」
「はい、お邪魔します……」
コンビニを出たら、本当にすぐに着いてしまった課長の家。男の人の家って感じがして、緊張しかしない。手持ち無沙汰で部屋をグルっと見回すと、本棚が目に留まった。
あ……本が逆さまに入ってる。会社では几帳面そうに見えてたけど、意外と大雑把なのかな?
「どうした?そこに何かあるのか?」
「っ!」
いつの間に近くに居たのか、耳の真横で聞こえた声に体が大袈裟なぐらいにビクッと跳ねた。
横を見ると、背後から覗き込むようにしている課長の顔が真横にある。あまりにも近くにあって、目が合ってすぐ焦って顔を元に戻した。横からじっと見られている気がして顔全体が熱い。
「……そんな反応されたら、食事どころじゃないんだけど」
そのまま後ろから抱きしめられて、首元に少しだけ髪の毛が触れる。
「課……長……」
「プライベートでまで課長って呼ぶつもりか?」
「そ、れは……」
「……恋人には、名前で呼んで欲しいんだけど」
課長の求めている事は分かるのに、言葉が出てこない。
「……瑠美、呼んで」
「っ……尚輝さん……」
「ん……いい子。もう一回こっち向いて」
言われるままに顔を向けると、予想していた感触が訪れる。
昼間に会議室でした時よりも熱を持っている気がして、そのせいか体が熱くなって来る。
「……っふ……はあ……」
「……先に、瑠美が欲しい」
真っ直ぐに見つめられてしまえば、私には頷く以外の選択肢はない。
「よっ……と」
「え?!あのっ……降ろして下さい……!」
急に抱き上げられて、驚きと焦りで身動ぎしてしまう。
「暴れたら落ちるから、大人しくして」
「でも……」
「重くないし、俺が運んでいきたいんだ。だからこのままでいて」
「……ずるいです。そんな風に言われたら断れない……」
抱かれたまま顔を胸に埋めると、頭上で少し笑っている気配がする。
「拗ねてる所も可愛いな……そういう所、もっと俺にだけ見せて」
髪の毛に唇が触れた気配の後、課長がゆっくりと歩き出した。連れて行かれる場所は1つだけ。それが分かるだけに、どんどんドキドキが大きくなっていった。
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