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5話
「本当にクリスマスムード一色だな」
「そうですね」
仕事を終えて課長と2人で駅までの道を歩く。昨日までと何も変わらない景色なのに特別に見えるのは、きっと課長が隣に居るから。
「どうした?」
「……いいえ、何でも無いです」
この状況は夢なんじゃないかとまだ信じられなくて、何度も隣を歩く課長を見てしまう。仕事中とは少し違う優しい表情と、会社を出てからずっと繋がれたままの手が、これは夢じゃないと教えてくれている気がする。
「この後だけど……俺の家でもいいか?」
「……はい」
返事をした瞬間、握られた手に力が籠った。
「……じゃあ、折角のイブだしケーキとかあれば買って帰るか。お腹も減ったしな」
「そうですね」
本当は緊張でお腹が空いてるかどうかもよく分からない。お昼も結局殆ど食べてないし、空いてないわけはないんだけど。
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