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6話
「んっ……」
寝室に着いてベッドに寝かされたと思ったら、すぐに唇が覆われてあっという間に呼吸が乱されていく。
「待っ……んぅ……」
「……っはぁ……待てない」
唇が移動していくと同時に、着ているスーツもどんどんと脱がされていく。意識を唇と手のどっちに持って行けばいいのか分からない。気付いた時には、既に指が素肌の上を楽しむように撫でていた。
「……凄くドキドキしてるな。手の平にも伝わってくる」
「っ……」
耳の側で囁く声が普段と全く違う声に聞こえる。熱を帯びた声に、全身が甘く痺れていく。
「全部隠さず俺に見せて」
「あっ……」
僅かに残っていた衣類も全て脱がされて恥ずかしさに顔を逸らすと、少しだけ笑い声が聞こえてくる。
「照れてるのも可愛い」
「……ずるいです。課長ばっかり余裕で……」
「余裕なんて無いって言ったはずだけど。……それよりも、また課長って言ったな」
「あ……」
すぐに呼び慣れるのは難しくて、どうしてもつい課長って呼んでしまう。ちらっと彼の方を見ると、目が合った瞬間何故かニッコリと笑顔になった。その怪しげな笑顔に戸惑っていると、手を引っ張って起こされる。
「あの……?」
「俺の服、瑠美が脱がせて」
「えっ……私が脱がすんですか……?!」
「そう。課長って呼んだお仕置き」
戸惑ったまま課長を見つめていると、伸びてきた指先が首から肩にかけてスッと撫でて去っていく。
「……瑠美だけ裸でいいのか?」
そう言われてやっと自分が何も着ていない状態だと思い出して、慌てて布団を引き寄せる。
「あ、隠すの禁止。ほら、早くしないと瑠美の体冷えるから」
逃げ道が無いことを悟って、緊張して震える指を課長に伸ばしていく。今まで男の人の服を脱がした経験なんて無いから、どこからどうしたらいいのか分からないけど、一先ずワイシャツのボタンから外していく。
「……やり慣れてない感じだな」
「……男の人の服なんて脱がせたこと無いですから」
「そうか……俺が初めてか……」
嬉しそうに言いながら頭を撫でられて、少しだけ緊張が解れていく。……課長に触れられるのは、ドキドキもするけど安心もする。
ワイシャツのボタンを下まで外し終えたぐらいから、課長の手が悪戯に素肌に触れ始める。
「っ……」
「……ここからは自分で脱ぐから、触らせて。我慢出来なくなった」
「あっ……」
そのままベッドに押し倒されて、性急に触れてくる唇と手に、一気に体が熱くなってくる。
「はっ……んん……」
「いい所はちゃんと教えて。声も我慢しなくていいから」
「だっ……あ……!」
そんな事を言われても、と恥ずかしさに必死で我慢しようとするけど、それを許してくれない。
「……そろそろいいか?早く瑠美と1つになりたい」
小さく頷くと、いつのまに置いてあったのかコンビニの小さな袋から何かを取り出している。それが何か見えた時ハッとした。
「いつでも責任は取るつもりだけど、まだ流石にな……さっきコンビニで気付いたんだ」
買う物があるからってこれの事だったんだ……
「しばらく必要がない物だったから……傷つけたくはないし、思い出せてよかった」
優しいキスを一度した後、体の中心に熱を感じる。
「部下と上司である以上、これから悩むこともあるかもしれないけど、俺はきっともう君を手離せないからずっと隣に居て」
「……はい」
「瑠美……愛してる……っ」
「……んんっ!」
大好きな人の熱を受け止めながら、その幸せを離さないようにただ必死にしがみついていた。
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