6話

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独特の気怠さにベッドの中でボーっとなる。 「体大丈夫か?」 「はい」 「もっとこっちおいで。寒いだろ」 もう隙間が無いぐらいにピッタリとくっつくと、心地いい体温を感じる。 「ああ……どうりで寒いわけだ」 「どうかしたんですか?」 「こっち見れるか?雪降ってる」 「え?」 ベッドのすぐ横にある窓のカーテンを課長が少し捲っている。そこから外を覗くと、チラチラと白い物が舞っているのが見えた。 「積もりはしないだろうけど、ホワイトクリスマスなんて珍しいな」 「そうですね。綺麗……」 寒さも忘れて見ていると、突然目の前にリボンのかかった箱が現れた。 「これは……?」 「クリスマスプレゼント」 「え?何で……」 「……今俺が付けてる腕時計、実はペアウォッチなんだ」 「ペア……?」 「本当は、爺ちゃんから貰った時計がだいぶ前から調子悪くて、万が一の時用にと思って新しい物を探してはいたんだ。ペアを買うつもりなんて無かったけど、瑠美があの時計を毎日付けてるって気付いてくれた日に、偶然この時計を見つけたんだ」 まさか、あの噂を聞いた日……? 「あの時俺、嬉しかったんだ。気付いてくれたって事は、それだけ俺を見てくれてるって事だから。それで、告白するつもりでこれを買ってラッピングまでしてもらってたんだ」 「そう、だったんですか……」 「もう渡す事は無いと思って仕舞い込んでたけど、無駄にはならなかったな」 優しく笑っているけれど、その時の気持ちを考えると胸が苦しくなる。 「そんな顔しなくていいから。それより、これ開けないのか?」 促されてリボンを解いていくと、課長の物よりも少し華奢な腕時計が出てきた。取り出して付けてみると、思った以上にしっくりくる。 「……うん、サイズも合ってるし似合ってる」 「ありがとうございます。でも、私は何も用意してないのに……」 「俺は一番のプレゼントを貰ったから」 「え?」 「瑠美だよ」 「私がプレゼント……?」 「そう。俺にとっては、欲しくて仕方なかったプレゼント」 「……もう返品はききませんからね」 照れ隠しにそう言うと、一瞬驚いた顔になった後すぐに嬉しそうに顔が綻んでいく。 「返品なんてするわけない。ずっと大事に手元に置いておくに決まってる」 抱き寄せられて、頭をポンポンと撫でられる。 何となく時計を付けた腕を空中に伸ばすと、いつの間に付け直したのか腕時計をした課長の腕が隣に伸びてきた。 「……これ、会社の誰かにペアだって気付かれちゃいますかね」 「どうだろうな。目敏い奴は目敏いからなあ」 「気付かれたらどうしましょうか」 「……その時は堂々と交際宣言でもするか。そしたら瑠美に変な虫が寄ってくる心配もないし」 「要らない心配だと思いますけど……」 「いいや、必要な心配だ」 一瞬の間を置いて、2人でクスクスと笑い合う。 雪が降る寒い夜、私達の間だけは温かさに包まれたまま、これから先の未来の話をしながら幸せな夜が過ぎていった――。 ===END===
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