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実は俺は12月に行われる学生最後の大会で本戦に出場できなければ、テニスから足を洗おうと思っていた。理由は自分のポテンシャル、伸び代のなさにうんざりしたからだ。
テニスは小学生の時に始めた。小さい頃からなんでもそつなくこなす中の上の運動神経があったおかげで、テニスも常にそのコミュニティの中では上手い方であった。そんな俺が地域の大会で準優勝するのに時間はかからなかった。初めての準優勝はとても嬉しかったのを覚えている。しかし、それ以降の準優勝は全く嬉しくなかった。どんなに頑張っても、なぜかいつも2位だった。
そんな準優勝属性のせいだろうか、高校生の時は一度も本戦に出場できなかった。高校テニスではほとんどの大会が各予選で優勝した者だけが県大会本戦に出場できるのだが、どう言うわけか俺はいつも予選大会決勝まで行くのに、結局負けて3年間一度も本戦出場をかなえることが出来なかった。
その悔しさもあって大学進学後、芳樹含め皆がサークルを選ぶ中俺はあえて部活を選んだ。だが、ここまでの約4年間、一度も本戦に出場できていない。周りから見てどうだかは分からないが、俺自身は自分の成長を実感できていない。最初からある程度打てた分、伸び代がないのだろう。才能があるように見えてなかったのだ。だから、最後の大会でもし予選敗退したら、俺はテニスを辞める。
そして月日は経ち、ついに最後の大会を迎えた。個人戦ながら日程が最後の方だったこともあって、チームメイトやマネージャー、コーチも応援に来てくれた。そしてあいつも、、、。
「よう、来たぜ!優勝しろよ、最後くらいw」
「いつもそのつもりだよ。それよりお前、内定は?」
「それがさ、ちょうど昨日連絡きて無事決まったよ!12月でもなんとかなるもんだわw」
「それならよかった」
「そんな人の心配より、自分の試合集中しろよw」
「言われなくてもわかってる」
今回の予選ドローは32人のトーナメントで構成される。つまり俺は、5回勝つ必要がある。1人だけ別のド予選ドローで既に本戦出場を決めたチームメイトがいるが、それ以外はみんな予選を突破することは叶わなかった。
「俺も突破してみせる」
そう自分に言い聞かせて俺は試合に臨んだ。
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