サブリーダー

2/3
前へ
/9ページ
次へ
「すみません、内定辞退をさせて頂きたくご連絡いたしました。」  俺は就活で得た内定を全て辞退し、会社に就職せず卒業する道を選んだ。なぜなら気づいてしまったのだ、会社は学校と違って「副〇〇」という肩書きを得ることがほぼ不可能ということに。  自分から立候補、あるいは周囲の賛同を得てなることができたこれまでの副部長と異なり、会社における肩書きは昇進・出世によって決まる。会社によって差異はあるものの、一般的には主任→係長→課長→部長と出世し、ほんの一握りの人間がその先にある役員の肩書を得ることができる。ここで気づくのは、会社においては主任は永遠に主任ではないし、係長は永遠に係長ではない。いつかは出世して次の肩書きに進むのだ。そしてそこには副主任や副係長と言うものはいない。いたとしても、いつか主任や係長に出世する。課長や部長まで行くと退職するまで永遠にその肩書きに居るものも存在するが、それはこれ以上の出世がないことを意味する。  つまり、会社員においてずっとサブリーダー的役割を維持することは、窓際社員やそこまで行かずとも出世コースを外れた人間にならない限り不可能だ。もちろん副社長まで上り詰めれば理想的だが、そこまで行くにはずっとトップを走り続ける必要がある。言い換えるなら、今まで避けてきたトップという役割をずっと続けた挙句に、永遠のサブリーダーとも言える副社長が待っているのだ。いや、社長が辞めれば副社長は社長筆頭候補になるので永遠にとは言えない。    このことに気づいた俺は、会社員に絶望し、内定を辞退した。そして、友人を集めて起業した。  
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加