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For Earth
……もしもし?聞こえる?
少し電波が悪いかな。でも良かった。ちゃんと繋がったね。
こんなご時世だし、贅沢は言ってられないか。繋がるだけマシだよね。
……うん。明日、出発。ちょっとドキドキしてる。
でもラッキーだったな。私、これで人類初になれるんだもん。
……え?
……君には、わかっちゃうか。
うん。怖いよ、やっぱり。何より、捨てていくものが、大きすぎるもん。
いや、逆かな。
私が、捨てられるのかも。
……どういう意味だと思う?
……わかんない?そりゃそうか。
あのね、私ずっと考えてたの。
今まで人類は色んなものを発明して、色んな技術を発展させて、世界を自分たちの思い通りに作ってきたでしょ。
それは、私たちにとってはいいことで、地球にとっては悪いことだった。
だから今、こんなことになってる。
数年の間に、人間が住める場所なんてほとんど無くなって、人類が発展させてきた技術を維持することすらできなくなった。
社会が、世界が壊れて、私たちは必死に生きる道を探してる。
その結果が、これ。
地球を捨てて、過去を捨てて、宇宙に、未来に逃げようとしてる。
だけど、捨てるのは、本当に私たちの方なのかな。
私は、違うと思う。
捨てられるのは、私たちの方。
地球が、私たちを見限ったんだよ。
人間が、体内のウイルスや害を成すものを排除しようとして熱が出るように、地球もきっと、人間とかいう害を成すものを排除しようとした結果、熱を出したんじゃないかな。
私たちは、地球の自然という名の免疫に耐えきれなくなって、排除される。
だから、捨てられるのは、私の方。
人間は、どこで間違ったんだろうね。
どこからやり直せばいいんだろうね。
やっぱり、どこからやり直しても、意味なんてないのかな。
人間なんて、所詮エゴの塊だから。
どうあったって人間は、自分のエゴで、地球を壊すのかもしれない。
それとも、これも逆かな。
もしかしたら、これは地球のエゴなのかも。
人間なんてものを生み出しておいて、害を成すようになったら排除する。
地球のエゴで、私たちは捨てられるのかも。
……なんてね。冗談だよ。びっくりした?
こんな状況だからさ、色々考えちゃうの。
……え?行先?今更何言ってんの?火星に決まってるでしょ?
ああ、でも。
この切符は、片道地獄行きかもね。
……ふふ。冗談だって。
そろそろ、切るね。明日、早いから。
……うん。バイバイ。またね。
もしかしたら、もう二度とこうやって話せないかもしれないけど。
……その時は、私の事、忘れないでいて欲しいな。
なんてね。
……バイバイ。
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