From Future

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From Future

……もしもし、聞こえますか? …………あ、聞こえる?って、待って待って、切らないで! 君と話したいの。ね、ちょっとだけ。お願い。 ふふ、ありがとう。 そんなに時間は取らせないから。うん。少しだけ。 簡単に言うね。 君は今、分岐点に立ってるの。 正確には、分岐点のちょっと手前、かな。 何の話って?まあまあ、とりあえず聞いて。 もうすぐ、世界を左右する大きな分岐点がやってくる。そこに立った時、君はどうするかって話。 まあ、言っちゃうと、君一人じゃどうしようもないんだよね。 自分でもわかってると思うけど、君はそんなに影響力のある人間じゃない。 だから、君にこんなことを言ったって、どうにもならないの。 ……じゃあなんで自分にかけてきたのかって? ふふ。なんでだろうね。自分でも、わからないんだけどね。 やっぱり、1番君に後悔して欲しくないから、かな。 ま、そんなことはどうでもいいの。 とにかく、もうすぐ、君いや、君たちはとてつもなく大きな壁にぶつかる。 それが何かは、まだ言えないんだけど。……多分、すぐにわかるよ。 本当は、そんなことない方がいいんだけどね。 今の時点で、それが止められるか、私にはもうわからないから。 だから、伝えたいの。もう、時間がないから、君にできる限り伝えておきたいの。 私はもう、戻れないから。あと少し、私たちに時間が残されていたら、違ったのかもしれないけど。 ……ううん。こっちの話。 話を戻すね。 近い将来、君が壁にぶつかった時、君はね、多分何も感じないと思う。 ……どうしてって?簡単だよ。 壁が大きすぎて、別世界のことみたいに感じるの。 ある意味、人間の防衛本能かもね。 自分には何も出来ない、とか、自分には関係ない、とか。 そんなこと思ってる間に、世界は進んでいく。 そして、気づいた時にはもう手遅れ。 君に選択肢なんてなくなってる。 ……なんのことかわからない? ふふ。そうだろうね。でも、その時が来ればわかるから。だからその時まで、忘れないでいて欲しいの。 それだけ。 なにか質問、ある? ……なんでわざわざこんなことを、か。 さっきも言ったけどさ。私は、君に1番後悔して欲しくないの。君にはまだ、時間があるから。 それにね……これは、私のエゴなの。 名も無き"君"に、私の願いを託してるんだ。 ……え?……うーん。どうだろうね。 人間なんて、エゴの塊だよ。 私たちがいる世界だって、人間の産物なわけ。 世界ってさ、エゴで成り立ってんだよ。 他人のためとか何とか言ってても、結局は自分がどうしたいか、自分にどんな利益を齎すか。 世界はそんな考えで回ってる。 今、私ね火星に移住するのに必要なあれこれの研究をしてるの。 大気がどうとか、土壌がどうとか。機密だから、あんまり深くは言えないけど。 それだってさ、人間の未来のためとか、発展のためとか、仰々しいお題目がついてるけど、結局私は自分のためだよ。 お給料貰って、週末美味しいもの食べるために働いてんの。 ……美味しいものって言ったって、大したものじゃないけどさ。 まあ、そういう感じ。私はきみのために電話した、という大義名分の上で、自分のために喋ってるの。 ……ん?私がどこにいるのか? うーん、それは如何とも答え難い質問だね。 君からは、すごく遠くて、でもほんの少し先にある場所、かな。 ……よくわかんない?だろうね。いいよ。わからなくて。 できれば君には、こっちには来て欲しくないんだ。 ……長く喋りすぎたかな。うん。ごめんね、時間取って。 それじゃ、いつかまたかけるよ。 ……え?かけてくんなって?酷いなぁ、いいじゃない。 ふふ。じゃ、またね。
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