名前のないきみへ

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 長い廊下を進むと階段がありそこを上りきる扉があった。  彼が扉を開けると強い光がぼくの視界をさえぎる。  太陽の光だ。  強いその光は身体の表面を焦がし体温を上昇させる。  扉の向こうには山が見えた。とても大きな山々がまわりを囲んでいるかのようにそびえ立っていた。彼女と共になだらかな斜面を下るとさっきのところは丘だったとわかる地下へ下りる扉はちょうど丘の頂上にありコンクリートの直方体に扉が付いているだけだった。 「わたしたちのお家はあそこの森の中にあります」  指差した方角を見ると唐突に生い茂る木々の間から杏子色の屋根の先端が見えた。 「マスターはまたあそこでわたしと暮らすのです」
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