名前のないきみへ

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 椅子に座るように言われたぼくは目を閉じた。少し疲れていた。   きっとこの数時間でいろいろなことを体験したからだろう。  彼女はカップを片付けるために台所に立った。  何か手伝うことはないかと尋ねたが何もないと断られてしまったためぼくは彼女の背中を眺めることにした。  窓から長さの違う金属の棒が垂れ下がっていて風が吹くたびに揺れてぶつかり高い音を鳴らす。不協和音以外の何物でもないその音にぼくは嫌悪感を抱いたが、彼女の背中は嬉しそうに小躍りを始める。ぼくにとっては不快であったが彼女が音色を気に入っていることを知った。  
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