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名前のないきみへ
ぼくはゆっくりと目を開けた。
台の上に寝ていた。上体を起こしてあたりを見回すと工具やら資料やらが散らかっていて、大量の四角い機械たちが広い部屋を埋め尽くしていた。
少し離れたところにある椅子に座った女はピクリとも動かず眠っているようにも見えたが、ぼくを見ると笑みを浮かべた。
「おはよう御座います。マスター」
彼女は椅子に座ったままいった。上下ともに白色の服を着ている。
「誰?」
彼女は立ち上がり一度部屋を出ると服と靴を持って戻ってきた。ぼくの質問に笑って答えた。
「あなたを造った人間で、あなたを憎んでいる者です。あなたは私にした仕打ちを覚えておりませんか?」
言葉とは対比して彼女は少し照れながら近づいてくる。天井の照明に照らされて彼女の顔を間近に見ることができた。肌の色は雪のように白く、対照的に髪は漆黒だった。
「ごめんなさい、ぼくはあなたを覚えていないようだ」
「謝ることはありません。少しずつ思い出してください。それにお召し物を」
彼女は頬を赤らめながらぼくに服を渡して着るように促す。
彼女と同じ白の上下だった。
「誕生を祝ってあなたにプレゼントを贈りましょう」
渡された服を着て彼女について歩く。
彼女は分厚い本を抱えていた。
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