0人が本棚に入れています
本棚に追加
「もう、止めた方がいいのかな」
それがちくわのためになるのなら……。
「わん!」
ちくわが小夜の荷物に鼻を当てて、匂いを嗅いでいた。いつものくせで、特訓道具を持ってきていた。ちくわは、今日も特訓をするのだろう、と思っているようで楽しげに待っている。
「特訓はもう、しなくてもいいんだよ」
「くぅ〜ん?」
「ちくわ。もしかして、またドッグショーに出たいの?」
「はっ、はっ。わん!」
言葉はわからない。しかし、ちくわがいつもの特訓をしたがっているのは伝わった。
もう少し。もう少しだけ。
「ねえ、ちくわ。もう少しだけ、あと一回だけ、わたしのわがままに付き合ってくれる?」
「わん!」
膝に前足を乗せるちくわ。目頭が熱くなる。鼻をすすり、小夜は笑った。
「ちくわ。ありがとう」
最初のコメントを投稿しよう!