わんチャンス

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「もう、止めた方がいいのかな」 それがちくわのためになるのなら……。 「わん!」 ちくわが小夜の荷物に鼻を当てて、匂いを嗅いでいた。いつものくせで、特訓道具を持ってきていた。ちくわは、今日も特訓をするのだろう、と思っているようで楽しげに待っている。 「特訓はもう、しなくてもいいんだよ」 「くぅ〜ん?」 「ちくわ。もしかして、またドッグショーに出たいの?」 「はっ、はっ。わん!」 言葉はわからない。しかし、ちくわがいつもの特訓をしたがっているのは伝わった。 もう少し。もう少しだけ。 「ねえ、ちくわ。もう少しだけ、あと一回だけ、わたしのわがままに付き合ってくれる?」 「わん!」 膝に前足を乗せるちくわ。目頭が熱くなる。鼻をすすり、小夜は笑った。 「ちくわ。ありがとう」
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