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滅
私、山越水鳥と弟の志路は、昨晩遅くに実家から戻ったせいもあって、太陽が高いところに昇るまでずっと眠っていた。
小五の私と小三の志路は、今はまだ夏休みの真っただ中だけど、両親は今日から仕事だと言っていたから、眠っている私たちを起こさないようにして仕事に行ったようだ。
まだぼんやりと夢心地のまま、体を捻って枕元の時計を確認すると、あと数分で午後一時になるところだった。
「もう、しょうがないなあ」
私はそうつぶやきながら、ゆっくりと布団から這い出て、志路の部屋を確認した。
案の定、志路はまだそこで寝息を立てていた。
「志路、起きなさい、志路」
私は志路の体を揺さぶりながら声を掛けたけど、志路は「ううん」とだけ唸って、背中を向けながら布団を深くかぶった。
「志路、起きなってば。友達と約束してんでしょ。もう一時になるよ」
「う‥‥‥えっ!?」
志路が勢いよく体を起こして、危うく私の頭と志路の頭がぶつかるところだった。
「もう。なんでもっと早く起こしてくんなかったの。僕、お姉ちゃんにお願いしといたじゃん」
志路は半泣きで私に当たってきた。
「自分で起きないあんたが悪いんでしょ」
確かに私は、寝る前に志路に頼まれていた。
もし僕が十二時過ぎても寝ていたら起こしてねって。
でも、仕方がないじゃない。私だってもう少しゆっくり寝たいところを、わざわざ起こしに来てやったんだから、むしろ感謝して欲しいくらいだ。
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