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志路は大急ぎで服を着替えて玄関に向かった。
靴を履こうと玄関先に座り込もうとした志路の背中に、私は手を伸ばす。
「背中、出てるよ」
私がそれを直してあげると、それまで怒っていた志路も恥ずかしそうに、ありがとうと言った。こういう時の志路は素直で、その顔を見ると、私もそれまでの事は全て許せてしまう。
「階段、気を付けてよ」
「階段からじゃ間に合わないから、今日はエレベーターで行く」
最後の言葉を言い切る前に志路は扉を閉めた。
ここはマンションの七階だけど、両親は私たちに階段を使うようにと口酸っぱく言っていた。
足腰を鍛えるためというのもあるけれど、それよりも子供が一人でエレベーターになんか乗って、途中不審者なんかが乗り込んで来たら危ないからというのが一番の理由らしい。
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