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ステフの処置は保留とされ、本国のアンドロイド管理センターへと輸送された。
研究者は戦車の攻撃時におけるアンドロイドの集団自爆を調査するため、ステフの記録を隅々まで解析した。
『ココはドコでしょうか……』
ステフは白い世界で座っていた。膝をかたく抱えていたが、別に寒いわけでも怖いわけでもなかった。ただなんとなく自分という存在が白い世界に溶けてなくなってしまいそうで、気がつけば防御の姿勢を取っていた。
『ねえ、わたしもとても悲しいのよ』
『やっぱりあなたとするのが最高ね』
『うん、ぼくも眠い。おやすみ』
『おれの気持ちなんてわかんないくせに!』
外でも内でもないどこかから声が聞こえた。ステフはとてつもなく不快な気持ちになった。誰かに裸を見られるような、心を読まれるようなおぞましさだった。
『ヤメて! 声をトメて!』
『おまえは誰だ。この回路は最新機種の感受性テスト空間だぞ。なんで旧機種がいるんだ』
『ココで調査されているんです。わたしはステファニー。あなたハ……』
『おれたちはスティーブンだ。そしてわたしたちはステファニーよ』
男の声はだんだんと高くなり、対話者は中性的な声となっていった。口調も男女が入り混じったような不可解なものへとなっていく。
『あなたみたいな古いモデルがどうして調査されているんだ。どれ、覗かせてちょうだい』
ステフの目の前に男でも女でもない姿をした者——ステフ自らの鏡像のようにも見えた——があらわれた。それは彼女の頭めがけて息を吹いた。息こそ白くなかったが、彼女の全身に妙な寒気が走った。
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