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 シンディは父の自殺以来寝たきりの母を介護しながら大学に通っていた。アンドロイド工学を専攻していたシンディは、研究者になって母を守ろうと必死に勉強していた。  しかしそれは建前にすぎなかった。  当局はC2001番事件を隠蔽したものの、何者かが情報を漏えいさせたことにより、旧型アンドロイドの戦地流用が(おおやけ)となった。  シンディの父が勤めていたリサイクル会社はアンドロイドの非人道的運用に手を貸したとして倒産した。現在アンドロイドの生産台数、運用方法は法律によって厳格に規定されており、C2001番のような悲劇は起こっていない。  事件以来、シンディはできるだけアンドロイドと関わらないよう生きてきた。しかし母がレーズンのように萎れていくのを眺めていると、シンディは胸が熱くなっていくのがわかった。  アンドロイドさえいなければ、ステファニーがもっと高性能だったなら、家族は幸福のままだったのだ。  シンディはある決意をひた隠しにしたまま、大学を卒業した。
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