1

2/2
前へ
/17ページ
次へ
 ステファニーはチェスターコートの肩に雪を積もらせ、転ばないよう慎重に歩いた。息を吐くと白い煙のようになるのが新鮮で、口をすぼめては吹いてをくりかえした。  黒っぽい雪でブーツが汚れることを恐れて、ステファニーは餌を探す働き蟻のように歩道を進んだ。すると出し抜けに右肩をとんと叩かれた。 「どこへ行く。うちはここだぞ」  ステファニーが歩道とつながった数段の階段をのぼると、男はのっぺらぼうの扉に息を吹きかけた。 「楽しいですよね」  男は首をかしげた。数秒後、ドアノブのあるべき位置が緑色に光り、扉が横にスライドした。  男に背中を押されたと思えば、今度は小さな女の子が飛びついてきた。ステファニーは踏ん張りがきかず、すでに閉まっていた扉に寄りかかった。 「あ……」ステファニーは無色になった息を漏らした。「いつもわたしを見ていた子……」 「そうだよ! わたしはシンディ! あなたの新しい家族よ!」 『息は外で白く、中で透明。成人男性と十歳ほどのシンディという少女に接触』
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加