8人が本棚に入れています
本棚に追加
2
「あなた、仕事中にシンディの視覚共有を覗いたわね。二人して出し抜くような真似を……」
「シ、シンディに頼まれたんだ! 忙しくて構ってやれないんだから仕方ないだろ!」
シンディにくっつかれたまま動けないステファニーをよそに、男は低くよく通る声を残してそそくさと階段を登っていった。
「あなた、名前はなんていうの」
シンディの母は腕を組み、左右に動きながら舐めまわすように来訪者を眺めた。
「登録名といいますか、シリーズ名はステファニーです。しかし命名権は購入者——」
「ステフ! あなたはステフ!」
家族だ——ステフはようやく気づいた。
見たことのない世界を目前に、購入者の具体的な情報をダウンロードする前に出てきてしまったのだ。
「わたしはステフ。わたしは家族。シンディの家族になった、ステフ……」
玄関の照明で輝く茶色の頭が、ステフの腹をぐりぐりとこすりつけた。
「ステフ! わたしがお姉ちゃんよ!」
『二階建ての家屋に住む三人家族の一員となる。名称はステフに変更。シンディは姉』
最初のコメントを投稿しよう!