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「あなた、仕事中にシンディの視覚共有を覗いたわね。二人して出し抜くような真似を……」 「シ、シンディに頼まれたんだ! 忙しくて構ってやれないんだから仕方ないだろ!」  シンディにくっつかれたまま動けないステファニーをよそに、男は低くよく通る声を残してそそくさと階段を登っていった。 「あなた、名前はなんていうの」  シンディの母は腕を組み、左右に動きながら舐めまわすように来訪者を眺めた。 「登録名といいますか、シリーズ名はステファニーです。しかし命名権は購入者——」 「ステフ! あなたはステフ!」  家族だ——ステフはようやく気づいた。  見たことのない世界を目前に、購入者の具体的な情報をダウンロードする前に出てきてしまったのだ。 「わたしはステフ。わたしは家族。シンディの家族になった、ステフ……」  玄関の照明で輝く茶色の頭が、ステフの腹をぐりぐりとこすりつけた。 「ステフ! わたしがお姉ちゃんよ!」 『二階建ての家屋に住む三人家族の一員となる。名称はステフに変更。シンディは姉』
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