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「たぬきは女に化け——」 「たぬき! 見たことないけど、動物でしょ! 小さなクマさんみたいな!」 「ええ、シンディは物知りですね。じゃあつづきを読みます」  疑似的な宇宙の下で、二人は大きな布団に包まれていた。流れ星はときどききらりと光り、すぐ横の壁でユニコーンが足を折ってうとうととしている。 「ちょっとステフ! さっきお姉ちゃんと呼んでっていったじゃない!」 「はい、お姉ちゃん」ステフはつづけた。「たぬきは男を騙して、手に持っていた——」  シンディのあくびのあと、ステフの視界の隅に同じくあくびをするユニコーンの姿が映った。流れ星がひとつ光る。 「あの、お姉ちゃん。読んでもいいですか」 「ステフはあくびしないの……」  返答に困ったステフは大きく口を開けてみせた。するとシンディはわざとらしくステフに背を向けた。ベッドが縦に揺れた。 『あくびを模倣することが推奨される。ステファニー型C2001番、スリープモードに移行』
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