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翌日、シンディの父は休日であるのにもかかわらず、オフィスへと足を運んでいた。会社のデータにアクセスし、「ステファニー型C2001番」をリサイクルリストに書き加えた。後日規定場所へと送ってしまえばよかったのだが、彼は一秒でも早くステフを家から遠ざけたかった。
その実リストへの無断追加は社内規約違反なのだが、些細なことなら揉み消せる立場である彼には関係のない話だった。
『初期化措置、エラー発生。該当データが存在しないため——』
新たな情報が更新された。
『C2001番、兵士モデルデータ更新』
部屋は夕方らしからぬ暗さだった。母はベッドの上ですすり泣くシンディの横に座り、涙を指ですくった。
「ああ泣かないで、かわいいシンディ」
「ステフは機械みたいで怖いよ……」
ユニコーンは止まり、目をぎゅっと結んだ。ティーセットドローンが注いだ紅茶を飲み、母はシンディの頬をつついた。
「ステフは売れ残りだったの。もうすぐ新モデルが発売されるわ。きっと素敵な家族になる」
シンディがはっと息を吸うと、母は糸のように目を細め、シンディを抱きしめた。
「もうすぐパパが帰ってくる。ごはんの支度をしましょう」
『兵士モデルC2001番、兵装完了。重要戦闘地9番への輸送準備完了』
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