1

1/2
前へ
/17ページ
次へ

1

 少女の網膜はぷかぷかと浮かぶベッドを映したあと、見あげる形でブロンドの女性を捉えた。 「ママ、あのアンドロイドがほしい!」 「だめよ。どうせすぐに飽きるでしょ」  小さな部屋のような設計がされたショーウィンドウ。そこにいた女性は優しくシンディに微笑みかけた。  シンディは母の返答を予期していた。リサイクル会社で激務に追われる父とは違い、母はシンディのわがままを聞こうともしない。  シンディはアンドロイドがほしくてたまらなかった。終いには、隣のドリームナイトで空飛ぶベッドを観察するふりをして足を止め、店頭の小さな一室にアンドロイドをねだる始末だ。  しかし、今日は秘策があった。シンディが大げさにうなずくと、ショーウィンドウに〈SOLD OUT〉という文字の羅列が流れ、すぐさま新作ゲームの広告画面となった。 「あら残念。さあ帰りましょう」  シンディはなにもいわず母の手を握った。空いている右手で小さな空間スクリーンを起動し、視覚共有を外しながら。 『ステファニー型C2001番、再起動』
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加