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「両方死ぬよ」
「いいのか、それで。そんな試合は稀よ?」
「構いませんよ、別に」
「もっと視察せんと。敗者と共に地獄に落ちるぞ」
「無だって言ったでしょうに」
今更、天国も地獄も体感速度自体変わらないよ。
次の言葉を殺された。恐ろしい程に生々しい台詞を、女は穏やかな顔を並べて吐いたからだ。
「それより、貴方はどちらに賭けますか?」
解らない。掴めない。何なんだ、この女は一体……
だが、悩んでる暇はもう無かった。
処刑の鐘ーーそう、試合開始を知らせる鐘が鳴り響く。
刹那、両者の血飛沫が花火のように舞った。
「まっ……、赤かな。
挑戦者は今回初出場だ。場馴れしてない」
「そう……」
赤側の得物は鎖鎌。対して青側は刀一本と来やがる。リーチ差を考えても、赤の方が有利で大した考察は要らなかった。
防戦一方の試合。だが、それだけだ。赤は余裕そうに青を嬲り始める。埋められない間合いに、青は焦りを見せていた。
「両者共に、武器はあれだけですか?」
「ああ、そうよ。数少ないルールの中で、得物は飛び道具を禁止とした一つだけってのは絶対だ」
「成程。武器破壊は有りですか?」
「勿論、有効だよ。そうなったら破壊された側の勝算は見込めないがな」
「そっ……」
じゃあ、本当にただの殺し合いだ。
女はそう溜息をついて、試合観戦に目を移した。
退屈げな視線が目につく。会場はこんなにも沸いていると言うのに、女は頬杖をつきながら男達の死闘を眺めているだけ。
余裕にも程がある。拗らせた女なんて腐る程相手にしてきたが、俺は未だかつて、こんな女は見た事がない。
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