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娘が亡くなって半年が過ぎようとしていた。
季節は、もう…あの暑い夏から、短い秋が過ぎ
すっかり寒い冬に移り変わっていた。
「今年は、夏が早く終わると良いね」
「ねっ。暑いの嫌やもんね」
癌で闘病中だった娘と
病院へ向かうバスの中で交わした会話だ。
「咲良…もう、冬やで…夏、終わってしもたやん」
話しかけても、返事なんて返ってくる筈もない。
わかっては居ても、お線香に火をつけて
娘の遺影に向かって、私はポツリと語りかけていた。
母親よりも先に逝ってしまった娘は
いったいどこへ逝ってしまったのだろう…
生きる気力を失った私は
半年が過ぎても、涙が枯れることは無かった。
「咲良…ママも咲良の所へ逝きたいよ…」
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