第三章 スターの仮面

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その役は日本の役者なら誰もが演じたいと夢見る アカデミー賞をいくつも受賞する 候補の役どころだった そこで亮はプロデューサ達と昼食を共にしたり アイドル達とクラブに行くはずの週末も断って 田舎にある監督の農園で夕食に付き合ったりした 辛抱強く懐いているフリをして年寄りが 昔の栄光にすがる昔話に熱心に耳を傾けたりした そしてしばらくしてマネージャーが 亮に知らせを告げに来た 主役は櫻崎拓哉に決まったと―― 弁護士を演じるには 亮には少し若すぎるといった理由だった 変わりに亮はバスケットの青春映画の主役を 与えられた高校生の役なんてもうまっぴらだ! 彼はもう23歳だった もちろんこんな映画は話題にはなるが アカデミー賞を獲るまではいかない 亮は雑誌の表紙の拓哉のページをやぶり 丸めてゴミ箱にすてた 櫻崎拓哉の時代は終わった・・・・ いや俺が終わらせてやる ツリーマイゼンタウンのタワマンから 吹き抜けてくるひんやりとした風を受けて 亮はこの誓いを繰り返していた そのためには 自分にはもっと力のあるエージェントが必要だ たとえば櫻崎拓哉をこの業界に君臨させている 彼のマネージャーの様な存在が・・・・
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