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その役は日本の役者なら誰もが演じたいと夢見る
アカデミー賞をいくつも受賞する
候補の役どころだった
そこで亮はプロデューサ達と昼食を共にしたり
アイドル達とクラブに行くはずの週末も断って
田舎にある監督の農園で夕食に付き合ったりした
辛抱強く懐いているフリをして年寄りが
昔の栄光にすがる昔話に熱心に耳を傾けたりした
そしてしばらくしてマネージャーが
亮に知らせを告げに来た
主役は櫻崎拓哉に決まったと――
弁護士を演じるには
亮には少し若すぎるといった理由だった
変わりに亮はバスケットの青春映画の主役を
与えられた高校生の役なんてもうまっぴらだ!
彼はもう23歳だった
もちろんこんな映画は話題にはなるが
アカデミー賞を獲るまではいかない
亮は雑誌の表紙の拓哉のページをやぶり
丸めてゴミ箱にすてた
櫻崎拓哉の時代は終わった・・・・
いや俺が終わらせてやる
ツリーマイゼンタウンのタワマンから
吹き抜けてくるひんやりとした風を受けて
亮はこの誓いを繰り返していた
そのためには
自分にはもっと力のあるエージェントが必要だ
たとえば櫻崎拓哉をこの業界に君臨させている
彼のマネージャーの様な存在が・・・・
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