第三章 スターの仮面

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彼と仕事をしていることは事務所中が知っている 事だし婚約者にみじめに振られた幼馴染みを 心配してはるばる田舎からやってきた この熱い友情に結ばれた二人になら 今婚約破棄してみじめだと思われている 自分に起こっていることを 話しても構わないのではないかと・・・・ いや・・・・ むしろ話してこの二人の前でだけは 弁護士の仮面を脱ぎ捨てて誰もがスターに 憧れる一人の女性として一緒にはしゃぎたいとも 思っていた いくら性格に問題を抱えているとはいえ 本物の櫻崎拓哉がどれほど素敵か 逐一この二人に話してしまいたい・・・・ なので数日前から弘美はこの二人に どう話そうかとさまざまな方法で考えていた しかし今の状況でも慎重に ならなければならないとも思っていた 自分は裁判を抱えた身なのだ 「あの・・・・・・ 聞いてくれる? とっても大事な話なんだけど・・・ あなた達にだけは知っておいてほしくて ずっと考えていたの・・・・ できれば内密にしてほしいのだけど 」 弘美は舌が滑りやすくなるように アイスコーヒーを一口飲んだ 「実家にもどってくるの?」 「いいのよ!あなたが決めたことならそれで」 二人は真剣な顔つきで言った 「違うのよ! そういう事じゃなくて・・・・ もちろん実家になんか帰らないわ 」 弘美は首を横に振った 「あなた達が誰かにわざとこの話をするなんて 思ってないけど私は弁護士だからあまりこの話を 公にされると困るのだけど・・・・ でも――― 」 ハッと真由美が息をのんだ 「まさか!あなた不倫してるのね!」 聡子が動揺して目を大きく見開いた 「それはやめなさい! あなたが傷つくだけよ!」 弘美は辛抱強く人差し指を横に振って言った 「違うわ! 実家に帰るでもなく不倫もしていないの・・・・ でも・・・ もしかしたらもっと厄介な事に なってるかもしれないけど・・・・ とにかく・・・ 出会いは2週間ほど前なんだけど―――」 その時玄関のチャイムが鳴った 弘美は無視して話を続けようとしたけど チャイムは激しく連打されてうるさいぐらいだ
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