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彼と仕事をしていることは事務所中が知っている
事だし婚約者にみじめに振られた幼馴染みを
心配してはるばる田舎からやってきた
この熱い友情に結ばれた二人になら
今婚約破棄してみじめだと思われている
自分に起こっていることを
話しても構わないのではないかと・・・・
いや・・・・
むしろ話してこの二人の前でだけは
弁護士の仮面を脱ぎ捨てて誰もがスターに
憧れる一人の女性として一緒にはしゃぎたいとも
思っていた
いくら性格に問題を抱えているとはいえ
本物の櫻崎拓哉がどれほど素敵か
逐一この二人に話してしまいたい・・・・
なので数日前から弘美はこの二人に
どう話そうかとさまざまな方法で考えていた
しかし今の状況でも慎重に
ならなければならないとも思っていた
自分は裁判を抱えた身なのだ
「あの・・・・・・
聞いてくれる?
とっても大事な話なんだけど・・・
あなた達にだけは知っておいてほしくて
ずっと考えていたの・・・・
できれば内密にしてほしいのだけど 」
弘美は舌が滑りやすくなるように
アイスコーヒーを一口飲んだ
「実家にもどってくるの?」
「いいのよ!あなたが決めたことならそれで」
二人は真剣な顔つきで言った
「違うのよ!
そういう事じゃなくて・・・・
もちろん実家になんか帰らないわ 」
弘美は首を横に振った
「あなた達が誰かにわざとこの話をするなんて
思ってないけど私は弁護士だからあまりこの話を
公にされると困るのだけど・・・・
でも――― 」
ハッと真由美が息をのんだ
「まさか!あなた不倫してるのね!」
聡子が動揺して目を大きく見開いた
「それはやめなさい!
あなたが傷つくだけよ!」
弘美は辛抱強く人差し指を横に振って言った
「違うわ!
実家に帰るでもなく不倫もしていないの・・・・
でも・・・
もしかしたらもっと厄介な事に
なってるかもしれないけど・・・・
とにかく・・・
出会いは2週間ほど前なんだけど―――」
その時玄関のチャイムが鳴った
弘美は無視して話を続けようとしたけど
チャイムは激しく連打されてうるさいぐらいだ
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