第三章 スターの仮面

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「きっと宅配便か何かね ちょっと待ってて     」 弘美がいそいそと玄関に向かうときに 聡子が真由美にブツブツ言う声を耳にした 「何をどう言われても不倫は絶対反対よ!」 弘美が玄関のドアを開けた時 まさしく氷のように固まった そこには怒りに顔をしかめた拓哉が立っていた 「いったいどうして君は僕の電話に出ないんだ! 今朝から何回君に電話してるかわかっているのか? スマホの電源を切っているだろう! どうして君は僕と簡単に 連絡がとれるのをややこしくするんだ! おかげで加々美弁護士に電話して君の家の 住所まで調べさせたじゃないか! まったく!どうかしてるんじゃないのか?」 拓哉は怒り狂って猛然と弘美の家にズカズカ入ってきた そして真由美と聡子がいるリビングを通りすぎて キッチンへ入っていった あまりにも夢中でわめいていたため彼は リビングに固まって座っている二人に気づかなかった 弘美の家の冷蔵庫を彼はバカンッと開けてさらにわめく 「おかげで撮影場所から飲まず食わずで 車を走らせてきたんだぞ! 何だ何も入ってないじゃないか! これからは僕が来ることを想定して カベルネの赤ワインを常に用意してくれていたまえ! そして幸次に言って君には僕専用のスマートフォンを 持ってもらう!夕方には出来上がってくるはずだ そのスマホの電源は絶対切らないように! 」 拓哉はカッカツとして怒りをぶちまけた 「聞いてくれ!! アホな脚本家は法廷の君が修正したシーンを 被告人側に僕が鞄を投げつけるシーンに 変えた方がいいと言うんだ! その方が面白いからといってな!! 僕は言ってやったよ 弁護士の業務に対するそんな侮辱的な行為は 真実味がないってね! なっ?いかにも君が言いそうな言葉だろ!」 そして彼はドカッと二人の前の ソファーに座りテーブルにあるみかんを 一つとって皮をむいて食べだした それからようやく自分の前で固まって 目を皿のようにひん剥いている 真由美と聡子に気がついた 「やぁ!お客さんがいたのか? 」 拓哉は二人ににっこり笑って愛想を振った 1分後弘美のマンションから二人の ディズニー映画に出てくる子供が驚いた時のような 甲高い悲鳴が鳴り響いた
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