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「きっと宅配便か何かね
ちょっと待ってて 」
弘美がいそいそと玄関に向かうときに
聡子が真由美にブツブツ言う声を耳にした
「何をどう言われても不倫は絶対反対よ!」
弘美が玄関のドアを開けた時
まさしく氷のように固まった
そこには怒りに顔をしかめた拓哉が立っていた
「いったいどうして君は僕の電話に出ないんだ!
今朝から何回君に電話してるかわかっているのか?
スマホの電源を切っているだろう!
どうして君は僕と簡単に
連絡がとれるのをややこしくするんだ!
おかげで加々美弁護士に電話して君の家の
住所まで調べさせたじゃないか!
まったく!どうかしてるんじゃないのか?」
拓哉は怒り狂って猛然と弘美の家にズカズカ入ってきた
そして真由美と聡子がいるリビングを通りすぎて
キッチンへ入っていった
あまりにも夢中でわめいていたため彼は
リビングに固まって座っている二人に気づかなかった
弘美の家の冷蔵庫を彼はバカンッと開けてさらにわめく
「おかげで撮影場所から飲まず食わずで
車を走らせてきたんだぞ!
何だ何も入ってないじゃないか!
これからは僕が来ることを想定して
カベルネの赤ワインを常に用意してくれていたまえ!
そして幸次に言って君には僕専用のスマートフォンを
持ってもらう!夕方には出来上がってくるはずだ
そのスマホの電源は絶対切らないように! 」
拓哉はカッカツとして怒りをぶちまけた
「聞いてくれ!!
アホな脚本家は法廷の君が修正したシーンを
被告人側に僕が鞄を投げつけるシーンに
変えた方がいいと言うんだ!
その方が面白いからといってな!!
僕は言ってやったよ
弁護士の業務に対するそんな侮辱的な行為は
真実味がないってね!
なっ?いかにも君が言いそうな言葉だろ!」
そして彼はドカッと二人の前の
ソファーに座りテーブルにあるみかんを
一つとって皮をむいて食べだした
それからようやく自分の前で固まって
目を皿のようにひん剥いている
真由美と聡子に気がついた
「やぁ!お客さんがいたのか? 」
拓哉は二人ににっこり笑って愛想を振った
1分後弘美のマンションから二人の
ディズニー映画に出てくる子供が驚いた時のような
甲高い悲鳴が鳴り響いた
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