第三章 スターの仮面

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「櫻崎たくや!櫻崎たくやぁぁぁぁぁぁぁ―――」 「キャ―――ッ!キャ―――ッ!キャ―――ッ!」 「動いてるわーーッ!喋ってるわーーーッ!」 「サッ サイン―――!! 握手!!どっち?どっち? 」 真由美は顔を真っ赤にしてソファーの 背もたれを握りしめ叫んでいる 今にも失神しそうだ! 「どうして拓哉が!! あなたの家で何をしてるのぉぉぉぉ?」 聡子は弘美のクビを閉める勢いで 詰め寄って弘美に唾を飛ばしている 「みかんを食ってるところだよ」 拓哉はテーブルのみかんの二つ目に手を伸ばしていた 「またしゃべったわーーーーーー!」 「キャーッキャーッーーーーーー!」 弘美はめまいを起こしそうになるのを必死に 目をつぶりこめかみを押さえた 今のこの状況では彼はまったく役に立たない 慎重に話を進めるのはもうすでにあきらめた 二人は上を下への大騒ぎだ 「あ・・あの! 私達ずっとあなたの大ファンなんです! あなたの映画は全部見ています! 」 「本当よ!「ボディガード」を3回も 映画館に見に行ったし! DVDも買ったわ    」 「私は写真集を全シリーズ持ってるわ!」 真由美が彼の右手をつかんでブンブン振り回している ほら!これが僕に初対面で会った時の 正しい反応だよ! と言わんばかりに拓哉は得意げに弘美を見た 「ありがとう そんなに沢山映画を見てくれて嬉しいよ」 彼は温かい口調で二人に言った 「それじゃ・・・・ 君たちは弘美の友達なんだね 」 今や二人は拓哉の前に膝間づき真っ赤な顔で 首をブンブン縦に振っている 拓哉は真由美の持ってきたみかんを5個平らげた 「和歌山から一泊で来たの!それうちのみかんよ!」 「都会は初めてよ 」 「こんなうまいみかんは初めてだよ 500個注文するから僕の撮影所に発送してもらえるかな?」 「どうしよう・・・!父ちゃんがたまげるわ!」 「僕たちはいつでも差し入れに悩まされてるんだ あとでマネージャーから君に連絡させるよ」 真由美はまっかな顔でノシ紙は付けるかとか 高級木箱に入れるかとまくし立てている 拓哉は「君にまかせるよ」と彼女にウインクした もう真由美は鼻血を吹く寸前だった 拓哉はスターが礼儀正しくファンに接するように 交互にさえずっている二人のおしゃべりを 辛抱強く優雅に相槌を打ちながら聞いていた
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