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「櫻崎たくや!櫻崎たくやぁぁぁぁぁぁぁ―――」
「キャ―――ッ!キャ―――ッ!キャ―――ッ!」
「動いてるわーーッ!喋ってるわーーーッ!」
「サッ サイン―――!!
握手!!どっち?どっち? 」
真由美は顔を真っ赤にしてソファーの
背もたれを握りしめ叫んでいる
今にも失神しそうだ!
「どうして拓哉が!!
あなたの家で何をしてるのぉぉぉぉ?」
聡子は弘美のクビを閉める勢いで
詰め寄って弘美に唾を飛ばしている
「みかんを食ってるところだよ」
拓哉はテーブルのみかんの二つ目に手を伸ばしていた
「またしゃべったわーーーーーー!」
「キャーッキャーッーーーーーー!」
弘美はめまいを起こしそうになるのを必死に
目をつぶりこめかみを押さえた
今のこの状況では彼はまったく役に立たない
慎重に話を進めるのはもうすでにあきらめた
二人は上を下への大騒ぎだ
「あ・・あの!
私達ずっとあなたの大ファンなんです!
あなたの映画は全部見ています! 」
「本当よ!「ボディガード」を3回も
映画館に見に行ったし!
DVDも買ったわ 」
「私は写真集を全シリーズ持ってるわ!」
真由美が彼の右手をつかんでブンブン振り回している
ほら!これが僕に初対面で会った時の
正しい反応だよ!
と言わんばかりに拓哉は得意げに弘美を見た
「ありがとう
そんなに沢山映画を見てくれて嬉しいよ」
彼は温かい口調で二人に言った
「それじゃ・・・・
君たちは弘美の友達なんだね 」
今や二人は拓哉の前に膝間づき真っ赤な顔で
首をブンブン縦に振っている
拓哉は真由美の持ってきたみかんを5個平らげた
「和歌山から一泊で来たの!それうちのみかんよ!」
「都会は初めてよ 」
「こんなうまいみかんは初めてだよ
500個注文するから僕の撮影所に発送してもらえるかな?」
「どうしよう・・・!父ちゃんがたまげるわ!」
「僕たちはいつでも差し入れに悩まされてるんだ
あとでマネージャーから君に連絡させるよ」
真由美はまっかな顔でノシ紙は付けるかとか
高級木箱に入れるかとまくし立てている
拓哉は「君にまかせるよ」と彼女にウインクした
もう真由美は鼻血を吹く寸前だった
拓哉はスターが礼儀正しくファンに接するように
交互にさえずっている二人のおしゃべりを
辛抱強く優雅に相槌を打ちながら聞いていた
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