4.仮初めを卒業したく

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「ずっとこうしたかった」 頭の上から降ってくる優しい言葉に、奈津は体を震わす。恐る恐る成臣の背に手を回せば、見た目よりも大きいその背中に男らしさを感じずにはいられない。奈津の方こそ、ずっとこうしたかった。 トクントクンと成臣の心臓の音が耳に響く。それはとても心地良く、奈津の心を落ち着かせてゆく。 本当に、生きていてくれてよかったと、奈津は何度も何度も感謝した。成臣はそんな奈津の髪を優しく撫でる。 「これからは背中合わせで寝るのはやめよう」 「はい。でも、いいのですか?」 「何が?」 「だって、成臣さん、馴れ合う気はないって」 初めて成臣と会った日、彼はそう言った。それに、奈津は父の研究費を出資してもらうために差し出されたモノだったはずだ。それを聞いてもいいものか躊躇われたけれど、聞かずにはいられなかった。 「私は父の研究費出資のための人身御供ですよね?」 「うん? どこでそんな話を聞いたのかな?」 「……使用人たちが噂してて」 「それは、困ったもんだね」 成臣はふむ、と腕を組む。 否定されないところをみると、やはりそうだったのだろう。奈津の心は再びズキリと痛む。が、成臣は奈津の頭を優しく撫でた。 「まあそれは、半分正解で半分間違いだな」 「それってどういう……」 「君の父上に研究費用の出資を頼まれたのは本当だ」 「やっぱり……」 奈津は顔を険しくするが成臣は「いや、そうじゃなくて」と奈津を制する。奈津は腑に落ちなかったが、大人しく成臣の言葉を待った。彼は顎に手を当て、奈津を覗う。
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