ロドニー・デューの独白:2

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ロドニー・デューの独白:2

a0b53aee-13b9-4fa0-9caf-8357b2df1881 この世界は危機に瀕している。 乙女ゲーム世界でありながら 「ヒロインが攻略対象と仲良くなって悪役令嬢が追い払われてハッピーエンドで終わる」 ような… そんな非生産的かつ非現実的な単純なものじゃない。 どこかのダンジョンがスタンピードを起こしたり 内乱プラス侵略で王国が滅亡したり 世界の均衡が崩れて世界そのものが滅亡したり といった環境崩壊ネタがてんこ盛り。 ヒロインが攻略対象と結ばれて、王国も世界も破滅せずに済むハッピーエンドもあった筈なのだが… それは同人パロディ化された作品しか知らない俺には無縁の知識だった。 (当然、俺はそのルートに関して何も知らない) 普通にプレイすれば ほぼ何らかの形で滅びが起きるシナリオだった筈。 そんな中で魅力的なキャラ達が自分の性質のままに動き 滅びを回避するべく足掻く。 それが二次創作作家の創作意欲の琴線に触れていたのだろう。 俺「ロドニー・デュー」はゲーム内では王族を護衛する近衛騎士として登場。 攻略対象でも何でもないいわゆる脇役だ。 それでも 髭の薄いツルツルお肌。 泣きボクロ。 などといった女性的な容姿という事もあり… 腐女子達の脳内でのロドニー・デューは「ウケ」専門の妖艶なオカマ。 一緒に王族護衛の任務に付いている他の近衛騎士らとデキてたり 年頃の王子達とデキてたり… 相当同人作家による二次創作の魔の手でイジられているキャラだった。 実際にそういうキャラに転生して何も知らずに生きてみると 「穴さえあれば何でも良い」 という飢えた男どもから犯されそうになる事も度々あった…(涙)。 綺麗系男子のケツが狙われる事態は 「決して腐女子の妄想空間にだけ有るという訳じゃなかった」 のである。 だが幸運にも今のところ俺のケツ処女は保たれている。 愛人の子とは言え、一応貴族の息子。 バーネット伯爵オーウェン・ファラー・ギルバート・グレイの庶子。 ロドニー・バルフォア・デュー・グレイ。 愛人の子とは言えど、父から認知されていて敷地内の別邸に住まわされていた。 基本的に領地持ち貴族の爵位は世襲制。 正妻の産んだ長男が継ぐ事になっている。 そうした貴族嫡男は 「王立魔法学院を高等部まで卒業して領主向け文官向けの教育課程を修了する」 ものだ。 選民意識を刷り込まれた優良血統の貴族から見れば 「男色=雄猿のマウンティング=野蛮な低脳人種の性癖」 という偏見が根強い。 それは父のオーウェンにしても当てはまるものだった。 父の男色への偏見が 「息子達を男色家どもの餌食にはさせまい」 と思うモチベーションになってくれていた。 庶子の俺の事に関しても、男色家の客や使用人を遠ざけ、自分の息子達のケツ処女を守る義務を果たし続けてくれた。 王立魔法学院中等部に入学するまでの間は。 困った事に王立魔法学院は全寮制。 ちょっとした治外法権だ。 親がどんなに子供を守ろうとしても親の力が届かない事もしばしば。 学院内の男色家から身を守るのは自分自身。 幸い中等部入学が12歳からだったので、既にその頃には 「俺は狙われやすい」 と自覚できていて、護身術を身に付けていた。 本格的に身の危険を感じたのは 王立魔法学院中等部を卒業してからのこと。 この世界は「15歳が成人」という事になってるので15歳で経済的自立を強いられる事が多い。 (特に庶子は) 高等部へ進学する男は大半が嫡男や学者肌のインテリや文官志願者。 その部類から外れる者達は、各種ギルドが主催する専門学校へと進学したり、王立騎士団に見習い入団したりする。 そこで俺は頭が良い方では無かった事もあり王立騎士団へ見習い入団。 騎士団はーー 大酒飲みで万年金欠の非モテゴリラ親父みたいな準騎士達もざらにいる…。 新入りに対する歓迎も荒っぽい。 「出世頭だから手荒な事をしておくと後日報復される」 という印象を植え付けておかないとトンデモない目に遭わされる。 「気が弱そうで要領も悪そうで出世の見込みなし」 と見做された新入りは目を付けられる。 ケツ処女を奪われ 徐々にそっち方面の調教を受けて 開拓されていってしまうという悲劇は 「野郎ばっかりの鮨詰め状態」 で必然的に起こる問題のようで… 鉱山奴隷(服役囚) 騎士団を含む各兵団 などの集まりの中では昔から自然発生しているのだそうだ。 (乙女ゲーム世界の筈なのにこの世界は何気にエグい…) 俺の場合は運が良かった。 正妻の子で次兄に当たる異母兄のダウエルが騎士団に先に入団していて、何かと良くしてくれた。 庶子だと正妻の子から蔑まれ実家からの支援を得られない状態に陥っている者も多い。 そんな連中はそうした「切り捨てられ状況」が周りにバレると、そのせいで陰湿なイジメやマウンティング(レイプ)のターゲットにされるのだ。 その点、俺の異母兄達は人目がある時は特に良くしてくれていた。 「バーネット伯爵家の人間におかしな手出しするな」 という潜在的牽制を社会に向けてしてくれていた訳である。 基本的に「他人をイジメてないと死ぬ病」に罹ってる基地外や「新入りのケツを狙う」男色家達は、家族から切り捨てられている者ばかり狙う。 「気が弱そうで要領も悪そうで出世の見込みなし」 と目された者達のうちから 「何をしても報復される心配がない」 孤立無縁の者を炙り出して食い物にするクズは どこからともなく湧くのだ…。 綺麗系イケメン貴族の庶子が騎士団のような戦闘職に就くための訓練組織に所属して無事に過ごすには… ゴキブリのように湧くクズに足を引っ張られずに生き延びる運と処世術が必要だった。 俺は運良く異母兄と仲良くしてもらえただけでなく 似た者同士で仲良くする互助会的友人関係にも恵まれた。 つまりーー ゲーム内で王子達の近辺を飾る近衛騎士となる脇役キャラ。 (俺を含み)その全員がイケメン。 エセル・アボット デール・フレッカー ドルフ・ラティマー イーサン・ブレイク マーカス・モーズリー 俺を含む六人全員が 「男色家どもから互いの貞操を守り抜く互助会」 の必要性を潜在的に理解していて、無自覚のうちにそういった団結理由で友情を深めていたのだった…。 俺が騎士の資格を得ると同時に近衛騎士へと任命される事は俺が前世の記憶を取り戻す前から実は内定していた。 (エセル、デール、ドルフは一つ上の先輩なので俺とイーサンとマーカスより一年先に近衛任務に就いていた)
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