班分け

1/1
前へ
/96ページ
次へ

班分け

842bd2d7-070f-4791-bc46-502fe6db04ff 日々の走り込みで10kmくらいはほぼ毎日走ってるものの…。 それでもかなりキツイ。 子供が身体を壊さない程度に自分を鍛えるには、この程度の距離が限界だと思って、走り込みの距離設定をしてた筈なのに… (この世界って子供が20km以上の距離をシレッと走り切ってしまうのが普通だったりするわけ?!) とツッコミたくなる。 「全員受け入れる訳にはいかないから狭き門を設けている」 という事なのだろうけど… これだと定員割れするのではないかと逆に心配になる。 それでもレベッカは平常心を保ちつつ 黙々と走り続けた…。 役2km毎に立ってる警備兵の数を数えて大体の距離を把握してなくても (そろそろ10kmくらい走ったんじゃないか?) と体力の削れ具合で自覚できた。 (…マズイ。ここからが本当にマズイ。…完走できるのかな?いつもの倍の距離を…) そう不安になった事もあり… ゲームで得た魔力の使い方を 「ここで実践してみよう」 と思い立った。 つまり魔力を使った身体強化術である。 皮膚表面に魔力を纏わせて皮膚を硬化させる鎧化防御。 筋肉に魔力を纏わせる筋力強化。 骨に魔力を纏わせる衝撃緩衝。 こういった身体強化術は 「学院入学後3年が経過して教わる内容」 なのでゲーム世界の授業で習うもの。 「身体強化術を常態的に行うと身体の成長が止まりやすい」 と言われる事もあり… 習うのは15歳を過ぎてからと決められている。 逆に成長期を過ぎた貴族は積極的に自分の身体に魔力を巡らせて身体強化をする事が推奨されている。 老化予防のために。 医療が未発達な社会なので、ヨボヨボになっても生命維持できるなどといった事はない。 ヨボヨボになれば誰もが普通に死ぬ。 魔力を持たない平民は50歳前後で老衰しヨボヨボになる。 一方で、魔力を持つ王族貴族が老衰してヨボヨボになるのは80歳前後。 身体強化術の持つ成長・老化抑制作用のお陰で30年ほども寿命に違いが出るのだから何かにつけて魔力持ちはお得だ。 なので、この時代では少数派であるものの 「身体強化術は自己防衛にも役立つため、非力な子供にこそ早期に教えて身を守らせるべきだ」 という考え方もある。 弊害として出てくると言われる低身長だがーー 女子だと可愛い気に繋がる。 男子の場合はナメられて無駄に対人面で苦労する元凶になる。 学院で習う時にも 「身長が伸びきるまでは身体強化術は常態使用はするな」 と戒められる。 (…今日だけ。今だけ。走りきるまでの間だけ身体強化で体力を底上げしてみたい…) という欲求がレベッカの脳内で閃いて… レベッカはその欲求をこらえる事ができなかった…。 *************** 野営地に辿り着いた子供の数は、定員の30人に満たなかった。 「26人か…。大体、想定していた通りのメンツが残ったな」 と中年教官のラング・ボネットが仏頂面をやめて、急に満足そうな顔になって言った。 レベッカは何とか走りきったものの…26人中21番。 それというのも魔力量をアップさせる訓練をしてこなかったため、途中で魔力の余裕がなくなってしまったのだ。 なので残り3kmくらいの地点で身体強化術をやめて地力の体力頼りで走った。 お陰でクタクタ…。 (ここまでやって定員オーバーで参加できないとかだったら、さすがにキレてたかも知れない…) と自分の余裕の無さを感じつつ 「辿り着いた順番に沿って5人ずつの班を作ってもらうが、参加者数は26人なんで最後の班だけは6人だ。 毎年同じルールの割り振りだが、活動は基本的に班毎で行なってもらう。 早く着いた者達から順にA・B・C・D・Eと班名を決めて、先着三班のA班・B班・C班には戦闘術を学ばせ魔物を狩らせる。 D・E班は野営用の雑用、主に食材調達と調理担当だ」 というラングの言葉に慰められた。 (頑張って先着15名内に入ってたら、野営用の雑用訓練ができなかったところだったのか…。ある意味、ギリギリ残れた現状が私にとって都合が良かったんだな…) と判った。 「D班とE班はコッチに集まれ!」 とレイ・チャーチル教官が声を上げたので D班とE班の面々は 「これから二週間ヨロシク」 という事で自己紹介をしていった。 レベッカはE班。 同じE班にはゲーム上での婚約者のエリアル・ベニントンも入っている。 エリアル以外のメンバーは ルシアン・バンクロフト マーヴィン・ブラッドリー ハーモン・トレント ポール・ダーウィン といった面々。 E班と同様に雑用班に割り振りされたD班の中には 第二王子であるグレッグ・レヴァインもいる。 D班のグレッグ以外のメンバーは ジョン・バークレー エドモンド・ヴィダル ジョエル・キングズレイ デニス・オブライアン の四人。 雑用班のメンバーの年齢はE班は全員11歳。 D班はグレッグのみが11歳で、他は皆12歳。 「一歳の年の差」でも体型と体力に差が出てしまうという事なのか… 聞くところによると戦闘訓練班のA・B・C班のメンバーは全員が12歳。 研修会終了後には魔法学院に入学が決まっている者達ばかり。 つまりレベッカ達11歳組から見ると一学年上の先輩になる連中だった。 雑用班の男子全員が口々に 「あ〜あぁ。戦闘訓練、うらやましいなぁ〜」 「俺も15番以内に入りたかった」 と、どうやら本気で戦闘訓練班をうらやんでいる様子。 レベッカはそれを横目で見ながら (…コイツら、正気か?…男って生き物はどいつもこいつも戦闘狂のアホばかりなのか?…) と思ってしまった。もちろん口には出さない…。 「テントを張る係と、薪用の枯枝を拾う係と、食える野草を採取する係を先ず決めてくれ」 とレイ・チャーチル教官に言われて 「えっ?食える野草を採取って…。見分けられないヤツは無理なんじゃね?」 と早速もっともな意見が出たところで 「それは俺が教える」 とマーカス・モーズリー教官が指導を申し出たので 「それなら俺、野草採取の係がいい!」 「俺も!」 「俺も!」 とすぐに決まった。 レベッカはテント係に立候補するつもりだったのだが 「薪ひろいが一番楽な係だからお前は薪ひろいにしておけ。ただし一人ではウロつくなよ」 と急に過保護な命令がレイ・チャーチル教官からくだされ、レベッカは同じ班のルシアンの後ろにくっついて薪をひろわされる事になった…。
/96ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加