ことばにならない。present

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今、ものすごく目が輝いている自信がある。 アイスのショーケースの中はいつ見ても宝石箱のようだ。3月末は商品の入れ替わり時期でもあるからか、自己主張の激しい「新商品」を掲げた宝石たちが、我先にと目に飛び込んできてもう、何を選んでいいのかわからない。 順々に見ていくと、小ぶりで上品で、少々お高いカップアイスが目についた。今回はショコラトリュフらしい。そっと手に取るともう吸い付いて離れない。 左手に贅沢な幸せを確保したまま、右手でスマホのメモ帳に文字を打つ。両手が塞がっているしどうやって見せようか、いやアイスを離せばいいのだけど、と思いながら左隣に目をやると、見慣れた双眸に射抜かれてしまった。いつから見ていたのかわからないけれど、つまりは私のこのはしゃぎようを見ていた可能性が高くて。いつもより少し優し気に細められている気がするその瞳から思わず顔を逸らしてしまう。きっと赤く染まっているだろう頬を隠すように再び画面を突き付ける。 『高いの、いい?』 ちらりと視線だけ動かすと、ものすごく優しい顔をした真偲くんがいて、ああもうその顔はだめだよ。 「たまにはいいんじゃない?」 じゃあ僕も、と安定の抹茶を手に取った。真偲くんの顔を直視できなくて彷徨わせていた視線が、その奥に陳列された、最近パッケージがかわいくなったカクテル缶に止まった。 お酒は好きだ。何も考えなくても良くなるし、何を考えているのかもわからなくなる、あの迷子の感覚が。その瞬間は、妹がいなくなったあの日から迷子のままな私が世界に肯定されているような気がしてくるのだ。 もともと外ではあまり量を飲まないし、今日は藍佳の介抱を見越していた。飲んでいない、というには思考がふわふわしていて、飲んでいると言うには地に足がつきすぎている。思わず「飲み直したい」と口が動くのを他人ごとのように感じていた。音にならない音は届くはずもなくて、真偲くんがずっとこっちを見ていたとも考えられなくて、アイスも傘もあるしいいか、と視線を外した時だった。 「まだ飲むなら付き合うよ」 まさか、と思ってさっきまで逸らしていたことも忘れて左隣に振り向く。 『気づいた?』 「そりゃあ気が付くよ」 何年一緒にいると思ってるの、と再び私の手を引く一回りも大きな手に、もう少しで10年目に入るんだよ、と心の中で返す。帰ってから余計苦しくなるとも知らずに、嬉しさの下の息苦しさに目を瞑って握り返した。
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