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ハンバーガーショップを出て、春海達はテーマパーク内を見て回る。新山と後藤が先を歩き、春海は鈴乃と並んで歩く。
「鈴乃君、さっきはありがとう」
「ん…あぁ、いえ。お礼を言われるような事は何も……鈴乃でいいですよ」
「うん。嬉しかったから……ありがとう」
春海がそう言うと、鈴乃は優しく微笑んで小さく頷いた。
「あの、今度は主任の事を訊いてもいいですか?」
「えっ…?」
「好きな食べ物とか、嫌いな食べ物、趣味とか」
「あっ、うーん……好きな食べ物かぁ…」
春海は悩んで少し言いにくそうに、鈴乃の顔を見上げて言った。
「……笑わない?」
「えっ? 笑う?」
「うん…」
「笑わないですよ。何ですか?」
鈴乃は首を傾げて不思議そうに春海に尋ねた。春海は一度うつむいて正直に答える。
「……餃子ととんかつ」
「……ぷっ! はははっ! あっ、すいません。でもっ、くくっ」
鈴乃が立ち止まって、口と腹に手を当てて笑う。春海も立ち止まり鈴乃に向き合って言う。
「笑わないって言ったでしょ!」
「あっ、はい。すいま…ふっ、せん…ふふっ」
「いや、まだ笑いが漏れてる!」
「いえ! すいません。もう笑いま…ふふっ、せん!」
「もうっ! どうせ、オヤジくさいって言いたいんでしょ!」
春海は振り返って鈴乃をその場に置いたまま、早足で歩き出す。すると、鈴乃がタタッと追いかけて来て、あっという間に春海に追いつき並んで歩く。
「いや、結構ガッツリ系が好きなんですね。オムライスとかパスタとか洋食のイメージだったんで……つい…ふふっ」
「オムライスとかパスタも好きだけど、この歳になると体力勝負なの。だからしっかりと体力がつく物を食べないともたないの!」
「この歳って、主任まだ34ですよね」
「もう、34なの!」
「いや、まだ、34でしょ!」
「鈴乃からしたら10も年上の私って、おばさんじゃないの?」
「はぁ? そんな訳ないですよ。何言って」
「私からすれば、10も年下の鈴乃は、若いなって思うけどなぁ」
「若い? 年下扱い…」
鈴乃は小さく呟く。春海には聞こえず、鈴乃に訊き返す。
「えっ…?」
「あ、いえ…」
鈴乃は誤魔化すように笑って、別の話をし始めた。
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