感謝

10/13
前へ
/128ページ
次へ
「皆に今日来る事と結婚の事を話したら、2人に会いたいって待ってたんだ」 佐々木が春海達に説明する。するとメンバー達は「またあとで」と言って、オフィスを出て行き、昼食に出て行った。 「佐々木先輩、黒木主任も一緒にいいですか? 2人に聞いて欲しいんです」 「あぁ、俺は構わない」 「じゃ、取りあえず昼食に行きましょう」 4人はエレベーターで下り、駐車場に向かって春海の車に辿り着く。 「ちょっと待って」 春海が後部座席に置いたビジネスバッグを取り、佐々木と黒木を乗せる。助手席に鈴乃が乗り込み、春海は運転席に乗り込んでビジネスバッグを鈴乃に渡した。 車を出し少し走らせ、お洒落なレストランに入る。4人は車を降り、店内に入ってテーブル席についた。春海と鈴乃は並んで座り、春海の前に黒木、その横に佐々木が座る。鈴乃がビジネスバッグを横に置くと佐々木が尋ねた。 「何、それ? 春海のビジネスバッグじゃねぇの?」 「あぁ、はい。それは食事が終わったあとに…」 「ふーん、そうか。で? 話ってのは何だ?」 「本題はこれなんです。あとでゆっくり話します」 鈴乃がビジネスバッグを指しそう話すと、佐々木も黒木もフッと息をついた。 「じゃ、これからの事を訊こうか。結婚はいつする予定だ? 式は?」 佐々木が話を切り出す。佐々木の問いに鈴乃が答える。 「実はまだ何も決まってなくて、今2人で話しているところなんです」 「そうなのか? 春海はどうするつもりなんだ?」 佐々木が春海に問う。 「私は、仕事を辞めて瞬のそばで子供を育てたいって思ってる」 「仕事、辞めんのか?」 「うん。佐々木は今のメンバーの事、よく知ってるでしょ。皆、それぞれ能力が高くて、もう十分仕事を任せておける。最終チェックは後藤がしているし、私の仕事は編集長にデータを送る事と取材の依頼を聞いたり、予約を取ったりするだけだから」 「そうだけど、その『カモメ』を作ったのは春海だろ。春海の存在があるだけでいいんだ」 「でもね、仕事は誰かに引き継いでいけるけど、瞬の妻として支えるのも、瞬の子供を産んで育てるのも私しか出来ないの」 「春海…」 鈴乃が春海を見つめ、テーブルの下で春海の手を握る。すると話を聞いていた黒木が、春海の目を見て言った。 「春海、俺が兼任して『カモメ』の主任になってやる。だから、春海は春海にしか出来ない事をしろよ。それで幸せになるなら、俺は協力するよ」 「黒木……ありがとう…」 「ったく! 黒木さん、いつもいいとこ持ってくよな。俺だって春海が幸せになるなら協力するって」 「ふふっ、そうだよね。今回の事で、佐々木にはお世話になったし……ありがとう」 話の途中で料理が運ばれて来て、一旦話は中断し4人は食事を楽しむ。食事をしながら、佐々木が鈴乃に写真展の様子を尋ね、鈴乃は佐々木と黒木に話して聞かせる。 「へぇ、すげぇじゃん! まぁ、写真が売れるっていうのは聞いた事があるけど、初めての写真展で、しかもニューヨークでだろ?」 佐々木が鈴乃を称賛する。同じカメラマンで写真を好きな佐々木も写真展には興味がある様子で、楽しそうに話を聞いている。すると今度は黒木が鈴乃に尋ねた。
/128ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1484人が本棚に入れています
本棚に追加