感謝

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「写真集も出してるって聞いたけど?」 「はい、2冊出版しました。1冊目は日本の風景で、2冊目はニューヨークの風景で出したんですが、日本の風景の方が人気ですね」 食事を済ませ食後のコーヒーを注文すると、店員が食器を下げテーブルの上が綺麗に空いた。そこで鈴乃は、ビジネスバッグからノートパソコンを取り出しテーブルに置いて、佐々木と黒木に話を切り出す。 「では、お2人に聞いて欲しい話の本題に入ります」 鈴乃がテーブルに置いたノートパソコンを起動させ、鈴乃の鞄から雪也の遺品である四角い缶を取り出しテーブルの上に置いた。 「それは、雪也さんの…」 すかさず缶を見た佐々木が言う。その時、コーヒーが運ばれて来てテーブルに4つのコーヒーが置かれる。それぞれ砂糖やミルクを入れてコーヒーを啜りながら、話を進める。 「雪也のって?」 「春海に渡された雪也さんの遺品の1つです」 黒木の問いに佐々木が答える。鈴乃が缶を開け1枚のSDカードをノートパソコンに差し、データを開く。パラパラと写真のデータが開き、佐々木と黒木に見せ話し始める。 「今、佐々木先輩が言われた通り、これは雪也さんの遺品です。この缶の中には雪也さんが撮った写真をおさめたSDカードが、こんなにも残されています」 鈴乃は缶の中を見せながら話す。 「佐々木先輩は全部見ましたか?」 「いや、俺が見たのは2、3枚だけ…」 「そうですか。俺は全部見ました。全部で17枚、春海を撮った写真が6枚、風景の写真が11枚あります」 春海が見たのは6枚のSDカード。3枚が春海の写真、もう3枚が風景の写真だった。そのほかも風景の写真だろうと思って春海はそのまま缶にしまっていたのだが、鈴乃は全てのSDカードを見たのだった。 「佐々木先輩はこの写真を見てどう思いましたか?」 「すごいよ。雪也さんの写真は、色んな技法で写真が撮られていて、枠にはまってないっていうか、どうやって撮ってるんだろうってくらい見た事のない写真なんだ」 「ですよね。俺も、色々考えてはみたんですが……分からない。勉強になります…」 「うん、そうだな…」 「黒木主任はどう思いますか?」 「俺は、写真の事はよく分からないけど、雪也が撮った写真は好きだよ。アイツにしか撮れないだろうなってずっと思ってたけど、やっぱそうなんだな」 「では、この写真を多くの人に見てもらう事について、どう思いますか?」 「えっ……鈴乃、それって…」 「はっきり言った方がいいですね。高堂 雪也の写真展…しませんか?」 佐々木も黒木も驚きのあまり、声も出ず鈴乃と春海の顔をジッと見つめていた。 「俺はこの雪也さんの写真を見て、このままSDカードで残しておくにはもったいないと思いました。こんないい写真を誰にも知られず、ここだけにしておくのは納得いかなくて、高堂 雪也というカメラマンがいた事を……こんな写真を撮れるカメラマンがいた事を、この世の中に知らせたいって思いました」 「鈴乃……お前…」
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