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「俺自身、雪也さんを知りません。春海にアルバムを見せてもらって。数枚の写真で雪也さんを見ました。嫉妬するくらいイケメンで驚きましたが…」
「ふっ、ふふっ、だよな。雪也さんは男の俺から見ても、カッコいいんだ」
「そうか? アイツ、笑うと子供みたいだぜ?」
(確かに…ふふっ…)
黒木が言った事に、春海は秘かに納得し頷く。
「俺は、鈴乃の意見に賛成だ。俺も雪也さんの事をもっと知って欲しいと思う。雑誌の写真を撮ってるだけのカメラマンでおさめておく存在じゃない。これだけの写真が撮れるカメラマンだって事を知って欲しい」
「俺も佐々木と同じ。鈴乃君のいう通りだな。雪也も喜ぶと思う」
2人が鈴乃に賛同してくれる。
「よかった。俺は雪也さんを知らないので、ただカメラマンとしての雪也さんをもっと知って欲しいと思っただけなんです。でも春海には春海の雪也さんがいて、お2人にもそれぞれの雪也さんがいる。亡くなった後、表に出す事についてどう思われるか訊きたかったんです」
鈴乃が安堵の表情で話すと、佐々木が言った。
「春海と一緒に鈴乃がこの事を訊いたって事は、春海は承諾してるって事だよな」
春海が頷いて返事をすると、今度は黒木が言った。
「俺も、佐々木もすぐに分かったよ。春海が承諾してるのなら俺達は構わない。俺達には雪也を知ってもらえる絶好の機会だ。是非出して欲しいと思ってる。どちらかといえば、鈴乃君の意見寄りだな」
「ありがとうございます」
黒木に鈴乃が頭を下げる。
「それなら、長谷部にも訊いてみて、雪也の写真のデータを見せてもらえばいい。使っていない写真のデータは残っているはずだからな」
「それは助かります」
「じゃ、それは俺がもらっておこう。で、いつ頃にするかだな。日本でするのか?」
黒木が尋ねる。
「そうですね。日本でしようとは思ってます。まだ時期とかは全然考えてなくて、取りあえずお2人に相談をと思っていたので」
「そうか。じゃこれからだな。何かあったらいつでも言ってくれ、協力するからさ。あっ、俺の名刺渡しておくよ」
黒木が上着の内ポケットから名刺入れを出し、名刺を1枚出して鈴乃に差し出す。
「ありがとうございます。黒木主任」
鈴乃が名刺を受け取り礼を言うと、黒木は微笑んで言った。
「その主任っていうの、やめてくれ。鈴乃君にとって俺はもう主任じゃないだろ。黒木でいいよ」
「あ、すいません。では黒木さんと呼ばせてもらいます」
「あぁ…」
その後は春海の進退の事や、鈴乃がニューヨークに戻ってからの事などを話し、今後の事を佐々木や黒木に相談しながら、春海は編集長にいつ話をするか考えていた。
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