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春海達はオフィスに戻り『カモメ』のメンバーに鈴乃との事を話し、退職を希望している事を話す。
「主任、私達はもう主任が退職する事を前提に動いていますよ」
そう言い出したのは新山だ。新山に続き、神崎が言う。
「主任には早く結婚してもらって、幸せになってもらわないと、鈴乃君へ送り出した意味がなくなりますよね。佐々木先輩」
「そうだな。その為に皆、少しずつ仕事を増やして春海を送り出す準備をしていたんだ。黒木主任も兼任してくれるって言ってたし」
神崎は佐々木に話を振り、佐々木が答える。
「えっ、私達の次の主任って黒木主任なの?」
「あぁ、さっき話してたからな。こっちの記事は後藤が最終チェックするし、兼任でも問題ないだろう」
皆驚いた顔をしたが、佐々木がそう言うと皆、納得して頷いた。
「じゃあさ、黒木主任が上司になったら、俺達って『カモメ』から『カラス』とかって呼ばれんのかな?」
赤楚のその発想に皆が呆気にとられ、シンと静まり返ったあと一斉に笑い出す。
「はははっ、『カラス』って。黒木だからカラス? うまい事言ったなぁ」
腹を抱えて笑いながらいうのは、植草だ。
「私、いやだぁ。『カモメ』のままがいい…」
「『カラス』いやだぁ…」
そう言って泣きべそになっている、神崎と松井。
「私も『カモメ』のままがいいな……ダメですか?」
「いいですよね……主任…」
春海にそう尋ねるのは富田と新山。
「『カモメ』という愛称は、周りが勝手につけたものだから別にそのままでもいいわよ。でも黒木が兼任って知ったら、周りがどう呼び始めるか…」
春海がそう言うと、神崎と松井が言った。
「こうなったら、私達から『カモメ』を前面に出していけばいいよ」
「そうだよ。元々、主任が作ったんだもん。主任の春海が由来で私達は、海の上を飛ぶ『カモメ』なんだって」
『カモメ』という愛称がこんなにも皆に思われていた事に、春海は嬉しく思った。それだけ春海を上司と認め、春海の指示で仕事をしていたという意識の高さの現れだった。
「ありがとう、皆。今まで本当にこんな私について来てくれて、ありがとう。感謝しています…」
春海は目に涙を浮かべ、皆に頭を下げた。
「主任、まだ早いですよ。送別会をしますので、正式な退職日が決まったら教えて下さいね」
新山が目を潤ませて言う。春海は頷き、皆に笑顔を見せた。
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