恋とか愛とか

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恋とか愛とか

月曜日に佐々木や黒木に雪也の写真展の事を話し、『カモメ』のメンバーに退職の話をした春海は、その後、鈴乃と話し合い今後の予定を決めた。 春海の退職日を年内12月31日を期限として決め、部屋の契約も同じ日にした。年末は早めに部屋を引き渡し、年末年始をニューヨークで過ごす。それまでは別々に暮らすけれど、電話やメールで連絡を取り合い、お互い行き来し合いながら1ヶ月半過ごす事にした。 年明けから結婚式の準備と、雪也の写真展の準備を始める予定になっている。写真展の出来る場所探しは、佐々木や黒木も協力してくれて早速探し始めている。 そして、鈴乃の籍はまだ日本にある。2人で話し合った結果、鈴乃がニューヨークに帰る前に入籍をしようという事になり、帰る前日2人で役所へ婚姻の手続きをし、春海と鈴乃は戸籍上、正式に夫婦となった。 その夜、夫婦となって『初夜』を迎え、お互いの体に刻み付けるように何度も抱き合い、愛し合った。 翌朝8時、鈴乃がニューヨークへ帰る日。8時45分発、ニューヨーク行の便。春海は車で鈴乃を空港まで送り、搭乗口で時間になるまでそばにいた。 館内にアナウンスが流れ、鈴乃と春海は立ち上がり抱き締め合う。口づけをして見つめ合い鈴乃が微笑んで言う。 「春海、少しの間だ。すぐにまた会える」 「うんっ、帰ったら忙しいと思うけど、無理しないでね」 「うん…」 「行ってらっしゃい」 「行って来ます」 鈴乃は微笑んでもう一度春海にキスをして、搭乗ゲートを入った。お互い見えなくなるまで手を振り見送って、春海は展望台に向かった。 展望台のデッキに出ると、目の前に鈴乃が乗る飛行機があった。小さな窓に鈴乃の姿を探すが見つからない。しばらく飛行機を見つめていると、小さな窓に左右に振られている手を見つけた。その窓から顔が外を覗くのが見えた。 (……瞬…?) 春海が大きく手を振ると、窓から見える手が激しく振られた。 (瞬だ! 見えるんだ!) その時、春海の脳裏にあの時の佐々木の姿が浮かんだ。 (佐々木もこんなふうに……) 飛行機は動き出し、春海は最後まで手を振り続けた。 「行ってらっしゃい!」 翌週の月曜日、編集長の元を訪れ、長期休暇を取っていた事を詫びるとともに、結婚した事を報告した。 「事後報告になり、申し訳ありません」 「いや、構わない。結婚おめでとう。結婚したら、家庭に入るのか?」 「はい、そのつもりです。なので、これを…」 春海はポケットから退職届を出し、編集長の前に差し出した。
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