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(ハンバーガーを食べたのって、何年ぶりだろ?)
ふと春海は思い、記憶を辿る。
(確か、ドライブスルーで……あっ……旅行途中…)
ハンバーガーを噛み締めながら、春海は雪也との旅行途中で食べた事を想い出し、目に涙を浮かべた。
「主任? どうしたんですか?」
春海に気づいた鈴乃が声をかけ、春海はハッと我に返る。
「あっ、えっ……ううん…」
春海はハンバーガーをトレーに置き、とっさに涙を拭う。
「何か、ありました?」
「いや、久しぶりに食べて、懐かしいなと思って」
鈴乃の問いに、春海は少し笑顔を見せてそう話す。
「久しぶりってどのくらい?」
「6年ぶり……かな…」
春海が答えると、3人は食べていた手を止める。慌てて春海は言った。
「あぁ、ごめん。そんなに暗くならないで。雪也がね、ハンバーガー好きだったの。一緒に食べてから、ずっと食べてなかったなって思って」
春海は平静を装い、皆が暗くならないようにそう話すと、鈴乃がポテトを食べながら尋ねた。
「雪也さんって何が好きだったんですか?」
「えっ……」
鈴乃の自然な問いかけに、春海はもちろん後藤や新山まで驚く。
「ハンバーガー。何のハンバーガーが好きでした?」
「てり…やき……」
「あっ! てりやきかぁ。俺も好きです! でもてりたまの方が美味いんですよね…」
鈴乃が普通に雪也の事を尋ね、普通に話しているのを聞いて春海は涙を流す。
「う…ん……雪也も、そう言って……てりたまが出るといつも食べてた…」
雪也を想い出した悲しい涙が、鈴乃の問いで雪也との楽しい想い出の涙へと変わる。「忘れなくていい」と言ってくれた鈴乃だからこそ、雪也の事を訊いてくれたんだと春海は嬉しかった。
「てりたまと月見は絶対食べてたんじゃないですか?」
「ふっ、ふふふっ、そう! 期間限定だからっていつも食べてた」
春海は涙を流しながら笑って、雪也の話をする。
「ははっ! 相当好きですね、雪也さん」
「うん、ほんとだよ…」
春海は涙を拭いて、鈴乃に微笑んで言った。
「ありがと…」
「ふっ、いえ…」
鈴乃も優しく微笑んで答え、後藤や新山も安心したように微笑んでいた。
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