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 明智家を生き延びさせるのに必死で考えもしなかったが、たしかに光秀様が天下を獲ったならナンバー2はこのワタシなのだろう。我ながら考えなしなことを言ったものだ。下手に言い訳してもどうにもならないだろうから、ここはあえて押し込んでみた。 「このさいワタシの話などはどうでもいいでしょう。それよりも現実を見て下さい。光秀様が敗れれば光秀様を討った誰かが天下を獲ります。その場合、藤孝どののポジションは今までと変わりありません。十万石そこそこの中規模大名です。政権中枢から数えればだいぶ下、その他大勢の中の一人に過ぎません。しかし今、光秀様に恩を売れば上から数えて何番目かに入ることになります。光秀様が引退しないとしても上から何番目かまで登れるのですし、光秀様が引退すれば藤孝どのが実権を握る可能性だってあるのですから、悪い話ではないでしょう」  藤孝は顔を真っ赤にして押し殺すような声でいった。 「この藤孝を、細川和泉上守護家の惣領たる藤孝を、その他大勢の一人に過ぎんだと……どこの馬の骨ともつかんおまえのような下賤の輩が」  どうやらワタシは踏んではならない何かを踏んだらしかった。全く違う価値観で生きている人の心のどこに踏んではならない柔らかい部分があるかなんて分からないし避けようがない。ただ出自の話をされるとワタシには反論することができない。黙っていると藤孝が早口でなじってきた。
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